フィンランド元内相の女性国会議員が、SNSやテレビ、パンフレットで、結婚や性に関する意見を述べたことで、ヘイトスピーチなどの罪で起訴され、計6年の禁錮刑に処せられる危機に直面している。
オーストリアに拠点を置くキリスト教法律団体「ADFインターナショナル」の声明(英語)によると、フィンランドの検事総長はこのほど、同国の国会議員であるパイビ・ラサネン氏(61)を3つの事件で起訴することを決めた。検察が起訴したのは、2004年のパンフレットにおける記述、19年のラジオ番組での発言と同年のSNSへの投稿に絡む計3件。ラサネン氏は、これら3件について2年前からヘイトスピーチなどの疑いで警察から捜査を受けていた。検察はこれら3件について、各2年計6年の禁錮刑を求刑している。
1995年から国会議員を務めているラサネン氏は、2004年から15年までは同国の「キリスト教民主党」で党首を務め、11年から15年までは同国の内相だった。フィンランド福音ルーテル教会(ELCF)に所属するキリスト教徒で、医学の博士号を保持しており、5人の子どもの母であり、6人の孫の祖母でもある。
ラサネン氏は、「自分の宗教的信念を表明することで投獄されることは受け入れられません」とし、「私は、誰かを脅したり、誹謗中傷したり、侮辱したりするという罪を犯したとは思っていません。私の発言はすべて、結婚と性に関する聖書の教えに基づいています」と訴えている。
「他の誰もが信教の自由と言論の自由を奪われないように、自分の信仰を告白する権利を守ります。私の表現は合法であり、検閲されるべきではないという見解を私は持っています。私は自分の意見を撤回しません。脅されて自分の信仰を隠すこともありません。クリスチャンが物議を醸すようなテーマに沈黙すればするほど、言論の自由の場は狭まっていきます」
問題とされているSNSの投稿は、ELCFが、同国のLGBT(性的少数者)権利擁護団体「SETA」が主催する「ヘルシンキ・プライド2019」の公式パートナーになったことに疑問を投げ掛けるもの。ラサネン氏は、フェイスブックやインスタグラム、ツイッター(いずれもフィンランド語)に同様の内容を投稿し、新約聖書のローマ信徒への手紙1章24~27節の部分を写した写真を添えていた。この聖書箇所には次のように記されている。
そこで神は、彼らが心の欲望によって不潔なことをするにまかせられ、そのため、彼らは互いにその体を辱めました。 神の真理を偽りに替え、造り主の代わりに造られた物を拝んでこれに仕えたのです。造り主こそ、永遠にほめたたえられるべき方です、アーメン。それで、神は彼らを恥ずべき情欲にまかせられました。女は自然の関係を自然にもとるものに変え、同じく男も、女との自然の関係を捨てて、互いに情欲を燃やし、男どうしで恥ずべきことを行い、その迷った行いの当然の報いを身に受けています。(ローマ1:24~27)
また04年のパンフレットは、ラサネン氏が当時、ELCFの性に関する教えについて自身が概説する内容だった。ラサネン氏は、結婚や安楽死、中絶などに関して、ELCFの指導者らよりも保守的な立場で知られており、論争の的になることは珍しくないという。