米オレゴン州のケーキ店主夫妻が、同性カップルのウエディングケーキ作りを拒否し、賠償金13万5千ドル(約1500万円)の支払いを命じられていた訴訟で、同州控訴裁は26日、夫妻に対し賠償金の支払いを命じた同州労働産業局の決定は「宗教に対する中立性を反映していない」として、賠償金の支払い命令を再検討するよう言い渡した。その一方で、夫妻が性的指向に基づく差別を禁ずる州法に違反しているとする判断は支持した。
同州グレシャムでケーキ店を営んでいたキリスト教徒のアーロン・クラインさんとメリッサさん夫妻は2013年、女性同士の同性カップルであるローレル・ボーマンさんとレイチェル・クライアーさんからウエディングケーキを依頼されたが、宗教上の理由で拒否した。同性カップルは夫妻を訴え、同州労働産業局は15年、夫妻に対し賠償金13万5千ドルの支払いを命じ、同州控訴裁も一度はこの決定を支持していた。しかしその後、連邦最高裁が19年、決定を取り消し、審理を差し戻していた。
エリン・ラゲセン判事は今回の判決(英語)で、「私たちは、アーロン氏が性的指向に基づきボウマン・クライヤー夫妻を違法に差別したとするオレゴン州労働産業局の判断を支持する当裁判所の先の決定を支持します」とし、差別行為については再度認定。一方で、「(しかし)私たちは、非経済的損害賠償を前回肯定したことについて異なる結論に達しました」とし、「オレゴン州労働産業局の損害賠償の取り扱いは、自由権行使条項が要求する宗教に対する中立性を反映していません。従って、私たちは命令の損害賠償部分を破棄し、救済に関連するさらなる手続きのために差し戻します」と命じた。
夫妻の弁護を務めるキリスト教法律団体「ファーストリバティー協会」のステファニー・タウブ首席弁護士は声明(英語)で、「州控訴裁は、この事件で検察官と裁判官の両方を務めた州機関(労働産業局)が、クライン夫妻の信仰に対して偏見を持っていたことを認めています。しかし、この反キリスト教的な偏見が訴訟全体に影響を及ぼしているにもかかわらず、州控訴裁は、やり直しのために本件をまさに同じ機関(労働産業局)に送り返そうとしています」と批判。「本日の判決をもって、約10年にわたるこの長編小説に幕を引くべきでした。オレゴン州がアーロンさんとメリッサさんを敵視するのは、もう終わりにしましょう」と述べた。
連邦最高裁は19年、夫妻に対する同州労働産業局の決定取り消しを命じた際、「マスターピース・ケーキ店対コロラド州公民権委員会」訴訟の判決を引用した。
この訴訟では、コロラド州公民権委員会がケ―キ店主のジャック・フィリップスさんに対して、同性カップルのウエディングケーキ作り拒否を理由に罰金を命じていたが、連邦最高裁は7対2でフィリップスさん側を擁護する判決を下した。判決では、同州公民権委の決定は、信教の自由を定めた米国憲法修正第1条に違反するとし、またフィリップスさんのキリスト教信仰に対する明確な偏見があったとしていた(関連記事:同性婚ケーキ作り拒否 最高裁でケーキ職人が逆転勝訴、なぜ? 判決詳細)。
タウブ氏の声明によると、夫妻は今回の判決を不服とし、オレゴン州最高裁、また必要であれば連邦最高裁に上訴する考え。ウエディング