英国のウェールズ聖公会は、同性カップルのシビルパートナーシップや結婚登記所での結婚を、聖職者が「祝福」することを認める議案を可決した。一方、教会で同性カップルのために法的効力のある結婚式を行うことは依然として認めない。
9月初めに英西部ニューポートのウェールズ国際会議場で3日間にわたる総会が開催され、ウェールズ聖公会の3つの代表機関すべてで3分の2以上が賛成し、議案が可決された。内訳は、主教会が全会一致で賛成、聖職者会が賛成28、反対12、棄権2、信徒会が賛成49、反対10、棄権1だった。
この規則は今後5年間、試験的に導入される。ただし、同性カップルを祝福する式への参加を希望しない聖職者や教会スタッフは、式に参加しないことも可能。
ウェールズ聖公会の主任主教であるアンドリュー・ジョン主教(バンゴール教区)は、今回の決定について、反対者からの反発を招くことは認識しているとしながらも、ウェールズ聖公会にとって「発展」だと考えていると語った。
「すべての発展は、ある意味、出発です。新たな実践の表明があるところでは、何かが変わるものです。たとえそのような変化が従来の立場と変わっていないように見える場合でも、変化はしているのです」
議案の提出者の一人であるグレゴリー・キャメロン主教(セントアサフ教区)は、議案の可決は同性カップルの祝福を支持する決定的な宣言だとして、「この議論で勝利したという感覚はありませんが、ウェールズ聖公会がLGBTQIA+(性的少数者)のコミュニティーのために、神の下に正しいことをしたと信じています」と述べた。
議案を提出した複数の主教は説明用の覚書で、議論を呼ぶ内容であることを認めつつ、それはまた「ゲイやレズビアンの人々を悪として迫害し、恐怖や不誠実、時には偽善を強要し、公にパートナーとの生活を送ることを妨げてきた教会の歴史を悔い改めるための一歩でもある」としている。
一方、ウェールズ聖公会内の福音派グループである「ウェールズ聖公会福音主義フェローシップ」(EFCW)は、今回の決定に対し失望を表明し、フェイスブックに掲載した声明(英語)で次のように述べた。
「EFCWの多くの人々にとって、今回の決定は、ウェールズ聖公会が結婚の伝統的理解から離れると決めたことへの悲しみと、今後、良心に基づいてどのように歩めばよいかという大きな不安とを伴うものとなるでしょう」
ジョン主教は採決前、教会史における他の変化になぞらえ次のように話していた。
「教会が血の混じった肉食を禁じる立場を変えたとき、あるいはあらゆる形態の奴隷制度が悪であるとしたとき、そこには変化がありました。使命は常に信仰の中心にあります。そして、神に生き、次に何が起こるかを考えることは、好奇心を持ち、新しい機会に心を開くことの一部なのです」
ウェールズ聖公会の信徒会の構成員で聖職候補生のルース・エレリ・ジェームズさんは、同性パートナーのハンナさんと交際している。ジェームズさんは英BBC(英語)に対し、今回の決定は自分にとって重要であり、「教会で結婚の聖奠(せいてん)を受けられる日」が来ることを祈っているとして、次のように述べた。
「採決の結果は、同性カップルのために何かをしたいと切望している地元の教会で私たちが個人的に経験したような、本当の愛と歓迎とを反映したものになるでしょう。またそれは、社会全体のLGBTQの人々に対して、彼らの関係は神に愛され祝福されていると伝えるメッセージにもなります。そしてそれは、いまだ与えられてはいないもので、私はそれを人々と共有できることを願っています」