第9回アジア宗教者平和会議(ACRP)東京大会は20日、アフガニスタンに関するセッションを開き、同国のために祈るとともに、現地で活動するパートナーと協力しながら、人道支援活動や中長期的な平和教育活動、共生のための対話活動の推進に尽力していくとするメッセージを採択した。
19日から始まった第9回ACRP東京大会は、21カ国から約300人が参加してオンラインで開催されている。アフガニスタンに関するセッションは開催直前に追加が決まり、現地で活動するNGOなど5団体の代表者ら7人を報告者として迎えた。各代表者は、米軍撤退に伴い、8月末にイスラム主義組織タリバンに掌握された現地の状況を伝えるとともに、そうした状況下でも取り組んでいる活動や、活動再開に向けた動きなどを報告した。
セッション最後には、アフガニスタンに向けたメッセージを満場一致で採択。宗教者が持つ責務と役割を指摘した上で、「アフガニスタンの私たちの家族のために祈り、行動を続けていきます」と宣言した。また、宗教者は「理想主義的理想主義者」ではなく「理想主義的現実主義者」だと指摘。「理想を掲げながら、まずできるところから汗をかいていく」とし、「アフガニスタンに安定と平和が一刻も早く訪れるように、パートナーたちと協力をしながら、人道支援活動、中長期的な平和教育活動、そして共生のための対話活動の推進に努めてまいります」とした。
メッセージ全文は以下の通り。
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アフガニスタンメッセージ
アジア宗教者平和会議
2001年9月11日に発生したアルカイダによる米国ニューヨーク市世界貿易センターテロ攻撃によって、アフガニスタンは長年の内戦から、泥沼の戦争へと突き進んできました。
本年に入り、米国軍のアフガニスタンからの撤退途次に、タリバンはアフガニスタン全土を制圧し(そのように宣言)、暫定政権を樹立しつつあります。結果、多くのアフガニスタン人が祖国を逃れ、第三国に亡命あるいは難民として流出しつつあります。
現地をめぐる状況はいまだに混とんとしており、各国もタリバン政権を基本的に承認しようとする立場、承認に否定的な立場、承認に慎重な立場と、合意形成には至っていません。
国外脱出を試みる人々の動きも現在はやや沈静化しているとの情報もあります。まだまだ予断を許さない状況にあり、タリバン政権の基本的方向性を見極めるには時間がかかることが予想されます。
ACRP並びに加盟組織は、1990年代後半からアフガニスタンにおける人道支援、復興、開発領域で現地NGO、国際NGOとの協力あるいは合同で積み上げてきたネットワークを有しています。
今、我々はアフガニスタンで困窮する人々に何ができるか、何をすべきか、単なる話し合いではなく、これまで、そして今も、今後も実直に活動を展開している私たちのパートナーの声を真摯(しんし)に聞き、今後のさらなる活動の展開につなげていく所存です。
あらゆる人々の平等なるいのちの尊厳に基づき、誰一人取り残されることなく、尊厳に生きる権利を実現していく、そのために私たち宗教者は大きな責務と役割を持っています。
主義信条、宗教、民族、部族、言語、文化の違いを互いに包摂し、尊重することの大切さ、違いは多様性がもたらす豊かで平和的な共存の根源であること、あらゆる宗教は、このことを慈悲、慈愛、隣人愛、兄弟愛、他者への奉仕など、それぞれの表現で説き、私たち一人ひとり、人類共同体に訴えています。
第9回ACRP東京大会で私たちはこのことを改めて深く認識し、アフガニスタンの私たちの家族のために祈り、行動を続けていきます。
私たち宗教者は決して「理想主義的理想主義者」ではありません。「理想主義的現実主義者」です。理想を掲げながら、まずできるところから汗をかいていく、特にACRPに集う私たちはこのことを肝に銘じ、アフガニスタンに安定と平和が一刻も早く訪れるように、パートナーたちと協力をしながら、人道支援活動、中長期的な平和教育活動、そして共生のための対話活動の推進に努めてまいります。
2021年10月20日
第9回ACRP東京大会参加者一同