第9回アジア宗教者平和会議(ACRP)東京大会が19日、開幕した。昨年開催の予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で1年延期され、オンラインでの開催となった。アジアを中心に21カ国・地域から約300人が参加し、「行動するアジアの宗教コミュニティ―誰一人取り残さない、健やかで豊かなアジアの平和をめざして―」をメインテーマに、さまざまな会議や分科会が行われる。日本での開催、オンラインでの開催はいずれも今回が初めて。
開会式では、雅楽の演奏とともに「お浄めの舞」が披露された後、イスラム教、神道、キリスト教の代表者がそれぞれ「諸宗教の祈り」として祈りをささげた。キリスト教からはカトリック教会のカルロス・レイス神父(フィリピン)が祈祷。その後、世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会の庭野日鑛(にちこう)会長と、ACRPの根本信博事務総長が歓迎のあいさつを述べた。
ACRPのディン・シャムスディーン実務議長(インドネシア)は、国際社会においてアジアが台頭する中、宗教コミュニティーには倫理を確立し、社会を進歩に導く役割があると強調。WCRP国際委員会のアッザ・カラム事務総長は、新型コロナウイルスの世界的流行や地球環境の危機などに際し、宗教組織の協力は人類生存のために不可欠だと述べ、ACRPの包括的な活動は指導的なモデルになると期待を寄せた。
祝辞を述べた日本宗教連盟の大柴譲治理事長(日本福音ルーテル教会総会議長)は、東日本大震災の発生から10年を迎えたことに触れ、世界中から寄せられた祈りと励ましの言葉、支援に感謝を表明。震災後、臨床宗教師やスピリチュアルケア師の養成と実践が本格的に始まったことを語った。その上で、「私たちが共に深い憐(あわ)れみの心、大いなる慈悲の心を持って、喜ぶ者と共に喜び、泣く者と共に泣くことができるよう、祈りと力を合わせていきたい」とし、「祈りこそ、私たちの希望であり、力であり、未来への礎であると信じている」と語った。
衆院総選挙と重なったため、ビデオメッセージで祝辞を述べた小泉進次郎前環境相は、気候変動対策や国連の「持続可能な開発目標」(SDGs)に向けた取り組みは政府だけでは不可能であり、さまざまなステークホルダーの関与が不可欠だと指摘。「宗教は社会の中で最も大きな社会的ネットワークでもある。一つの宗教ではなく、さまざまな宗教が連携、協働して国際的な諸課題に取り組むWCRP、ACRPに期待をしている」と語った。また「政治と宗教は人々を幸せに導くためのいわば車の両輪であると認識している」と言い、父の純一郎氏が首相だった2006年、京都で開催された第8回WCRP世界大会に出席したことなどに触れた。
基調講演では、京都芸術大学教授でNPO法人「アース・リテラシー・プログラム」代表の竹村眞一氏が、「人新世時代における人類と地球の共生・共進化」と題して語った。竹村氏は、自身が製作したデジタル地球儀「スフィア」を用いて、地球温暖化や北極の氷の消失、森林火災、干ばつなど、シミュレーションによって現在と未来のさまざまな危機を示し、社会が気候変動に対して脆弱(ぜいじゃく)になっていると指摘しながら、生活様式を変えることで未来を変えることができると強調。「人工」の「工」の漢字は「天と地をつなぐ人の営み」を表していると説き、「人間こそが自然をつなぐコーディネーターの役割を果たせる」などと述べた。
大会は今後、20日には「新型コロナウイルス感染症とアジアの宗教コミュニティ」と題した全体会議が行われ、立教大学総長で日本聖公会中部教区主教の西原廉太氏らが登壇する。また、タリバンが政権を奪取した最近のアフガニスタン情勢に関するセッションも行われる。21日には、複数の分科会が行われ、ミャンマー情勢や朝鮮半島情勢に関するテーマなどが扱われる。最終日の22日には、4日間の議論を踏まえ、大会宣言文が採択される予定。
大会の模様は動画共有サイトでもライブ配信(限定公開)され、大会ウェブサイトで事前登録することで、誰でもオブザーバーとして参加可能。日本語と英語の同時通訳が準備されており、各国から多くの参加が見込まれている。大会の詳細、事前登録は、大会ウェブサイトを。