東日本大震災の発生から丸10年となった11日、世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会(植松誠理事長)は声明「東日本大震災から10年を迎えて」を発表した。声明では、今も続く被災者の苦しみや被災地の現状に目を向けつつ、これまで行ってきた支援活動を振り返り、今後も被災者と共に歩みつつ「慈しみの実践」を継続していくと誓った。
声明は、震災発生から10年がたった被災地の現状について、「多くの人々の献身的な尽力によってインフラ等の復旧は進んだものの、いまだ被災地域に多くの傷跡を残し、さまざまな新たな課題を生み出しています」と指摘。避難者の健康悪化や家族の離散、孤立化の問題、支援減少や賠償打ち切りによる生活困窮、福島第1原子力発電所の事故処理などの課題に触れた。
その上で宗教者として震災を振り返り、「あらためて大自然の無常とその中での人間の力の限界を実感し、信仰とは何かを考えさせられる経験をしてきました」とつづった。一方で震災時、宗教者に与えられた使命は、被災者に寄り添い、共に歩むことを通して、人々に慰めや希望、励まし、心の癒やしをもたらすことだったと述べた。
WCRP日本委はこれまで、さまざまな被災地支援の取り組みを行ってきた。これらの経験を通して、宗教者には災害時、「防災」「緊急対応」「復旧・復興」という各段階において、多くの責任と役割があることをあらためて学んだという。そして、これらの取り組みは、行政や民間団体、国、国際組織などと協力して行うものであり、その中で「宗教者本来の災害対応」として、「悲しみ、痛み、苦しみを背負った被災者のために祈り、人々の心の安らぎをもたらす実践を行うこと」だとした。
最後には、震災が風化しないよう、今後も宗教宗派の垣根を越えて協力し、被災地の現状を伝え次世代に語り継いでいくとし、被災者と共に歩みつつ「慈しみの実践」を継続していくと誓った。また、国外の災害対応や将来の防災に向けた行動も、WCRPの国際的なネットワークと共にさらに強化していく決意を新たにするとした。