世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会は14日、福島県浪江町の大平山霊園で、東日本大震災の犠牲者を追悼し、復興を願う合同祈願式を開催した。WCRP日本委の代表者をはじめ、地元の宗教者や住民ら約60人が参列。プロテスタントからは阿部頌栄氏(日本ナザレン教団仙台富沢教会牧師)、カトリックからは幸田和生氏(カトリック東京教区補佐司教)らが参加した。
合同祈願式の開催は今年で7回目。震災翌年の2012年に岩手県大槌町で第1回を開催して以来、同山田町(13年)、福島県南相馬市(14年)、宮城県名取市(15年)、福島県相馬市(16年)、宮城県石巻市(17年)と毎年3月に被災地で行ってきた。
今年の祈願式は、大平山霊園内に昨年建立された慰霊碑の前で行われた。初めに、WCRP日本委理事で同東日本大震災復興タスクフォース責任者の黒住宗道氏(黒住教教主)があいさつ。「震災による苦しみや悲しみがますます深刻化・複雑化する中で、復興がかないますようにと、心から追悼と鎮魂、祈りをささげさせていただきたい」と述べた。
そして、教派神道、仏教、キリスト教、イスラム教、新宗教など、宗教宗派別の祈りがささげられ、地震発生時刻の午後2時46分には参列者全員で黙祷した。
その後、地元関係者を代表して、浪江町権現堂地区行政区長の佐藤秀三氏があいさつに立った。佐藤氏は、各宗教の祈りに感謝の意を述べた上で、震災から7年がたつ浪江町の復興状況を説明。「皆さまからの祈りをいただき、それに報いるためには、復興に向けた姿を見ていただくことが一番だと思います。これから浪江町は必ず復興します。元の町には戻れないかもしれない。でも、少しでも近づくよう頑張ります」と述べた。
WCRP日本委の一行はこの他、式典前には津波の被害に遭った浪江町沿岸部を視察。浪江町役場の担当者から、浪江町の被災当時の状況や、そこから学ぶ教訓について報告を受けた。
浪江町では東日本大震災の地震と津波により、182人(うち行方不明者31人)が犠牲となった。最も大きな津波の高さは15メートルを超え、これほど大きな津波を経験したことのなかった住民の多くが逃げそびれて命を落とした。また、東京電力福島第1原子力発電所にも近く、原発事故の影響で多くの住民が町外に避難した。同町の公式サイトによると、人口(住民登録数)は震災発生当時の約2万1500人から、約1万8千人(2月末現在)に減少した。
3月11日には、浪江町による追悼式が町内で行われ、遺族や来賓ら165人が参加。沿岸部の請戸(うけど)地区では、行方不明者の特別捜索も行われ、手掛かりとなるようなものも発見されたという。
世界宗教者平和会議(WCRP):1970年に発足した諸宗教の連帯によって平和活動を推進する国際組織。国連経済社会理事会(ECOSOC)に属し、99年からはNGOの最高資格である総合協議資格を取得している。現在、世界90カ国以上にネットワークを持つ。WCRP日本委は72年に日本宗教連盟の国際問題委員会を母体として発足。2012年からは公益財団法人として活動を展開している。