東日本大震災の発生から7年となった11日、キリスト教、神道、仏教の3宗教合同による「追悼・復興祈願祭」が鎌倉大仏殿高徳院(神奈川県鎌倉市)で開催された。キリスト教からは、カトリック、聖公会、プロテスタント各派の神父や牧師、信徒らが参加。震災の追悼・復興を求める祈りのほか、キリスト教各派で共通して祈られている「主の祈り」もささげられ、「アメイジング・グレイス」「いつくしみふかき」の賛美歌2曲が歌われた。
この祈願祭は、鎌倉市内の3宗教が震災発生1カ月後の2011年4月11日に第1回を開催して以来、毎年3月11日に開催している。会場は鎌倉市内の各宗教の持ち回りで、13年と16年はカトリック雪ノ下教会が会場となり、昨年は鶴岡八幡宮で行われた。鎌倉の大仏像を前にして開催されるのは、8回目の今回が初め。
今年参加した宗教者は、キリスト教約35人、神道約20人、仏教約65人の総勢約120人。高徳院の山門(仏教寺院の正門)から大仏像まで行列をなして進み、地震発生時刻の午後2時46分には、大仏像を囲みながら参加者全員で1分間の黙祷をささげた。その後、各宗教の祈りが、神道、キリスト教、仏教の順でささげられた。
キリスト教の祈りは、雪ノ下教会助任司祭の内藤聡神父による冠水と献香で始まった。その後、カトリック由比ガ浜教会のマリオ・ビアンキン神父(ミラノ外国宣教会日本管区長)が、新約聖書からローマの信徒への手紙12章7〜21節を朗読。参加者は、「愛には偽りがあってはなりません。悪を憎み、善から離れず、兄弟愛をもって互いに愛し、尊敬をもって互いに相手を優れた者と思いなさい」(同9節)などと、一言一言ゆっくりとした口調で読み上げる神父の声に耳を傾けた。
そして、日本聖公会鎌倉聖ミカエル教会の小林祐二牧師が、追悼・復興を求めて次のように祈った。
「それぞれのたまものを生かしながら、孤独な人々の友となり、助けを求める人々に手を差し伸べることができますように。そして、この世界の悲しみや苦しみから目を背けない勇気をお与えください。孤独を生み出してしまったこの社会が、愛と知恵によってますます温められますように」
続いて、南米ペルー出身の米山リディアさん(カトリック藤沢教会)が「アメイジング・グレイス」を英語で独唱。「主の祈り」は、雪ノ下教会主任司祭の古川勉神父が読み上げると、他の宗教者や一般参加者も声を合わせた。そして「いつくしみき深き 友なるイエスは 罪とが憂いを 取り去りたもう」と、賛美歌「いつくしみふかき」を参加者全員で斉唱。最後には、日本基督教団大船教会の松下道成牧師が「結びの祈り」として祝祷をささげた。
会場では、雪ノ下教会や市民ボランティアが協力して一つ一つ制作した「特別祈願ろうそく」も販売された。祈願祭を主催した鎌倉宗教者会議のロゴマークが印刷された袋に入れられたもので、事前に雪ノ下教会(キリスト教)、鶴岡八幡宮(神道)、明王院(仏教)で祈祷が行われており、復興を願う3宗教の祈りが込められている。価格は1つ500円で、売上金は災害支援基金に当てられる。
祈願祭終了後、報道陣の取材に応じた高徳院の佐藤孝雄住職は「復興はまだ道半ば。帰還困難者も多く、そういう人々の心に寄り添っていくこと、忘れないことが大事」とコメント。「このような行事を通して、鎌倉の心が常に被災地と共にあることを伝えていければ」と語った。