東日本大震災から丸7年となった11日、立教大学の吉岡知哉総長は、同大のホームページに「問いはいまも突き付けられている」と題するメッセージを掲載し、記憶の風化について「記憶そのものが薄れることであるよりも、自らの記憶・経験に向き合う意志の弱体化を示しているように思われます」と指摘。「あの出来事は一体なんだったのか。この問いに答える知性の力を私たちは鍛え続けなければなりません」と述べた。
同大は、2003年から岩手県陸前高田市の矢作町生出地区で課外教育プログラムを展開し、学生や教職員が地元の人々と交流を図り、震災後も、同市を重点支援地域に指定し、復興支援活動を続けてきた。昨年4月には、同市の協力の下、地元の岩手大学と連携し、「陸前高田グローバルキャンパス(愛称:たかたのゆめキャンパス)」を開設。同市との息の長い交流を支える拠点として、▽防災やまちづくりに関する研修・研究機会の創出、▽学生・教職員が、地域や国の垣根を越え、市民と共に学び、考え、行動する教育活動、▽大学の知見を生かした講座やプログラムなどの学びの機会の提供など、さまざまな取り組みを展開している。
吉岡氏は、「改めて犠牲となられた方々への哀悼の意を表するとともに、ご遺族の方々に心からお悔やみを申し上げます。困難な復興作業にあたられている皆さまの努力に敬意を表するとともに、なお避難生活を余儀なくされている8万人の方々が、1日も早く平穏な日常に戻られることをお祈りいたします」と述べた。
その上で、「2011年3月11日の大震災と津波、そしてそれに続く東京電力福島第一原子力発電所の事故は、いまでも私たちの心に深く刻み込まれています」とし、「私たち一人一人の経験は、被災地の惨状と被災された方々の避難生活の苦難へと思いを至らせる想像力の要でもある」と指摘した。また、「近代文明は自然を自分のコントロールの下に置き、そこから多くの便益を引き出す技術を発達させてきました。しかしそれが果たして私たちを幸福な未来へと導くのか。人間は自然にどこまで手を付けてよいのか。3・11はその根本的疑問と不安を露わにしました」と述べた。
最後に吉岡氏は、「この3月に大学を卒業していく学生たちの多くは7年前の春、中学校の卒業式や高校の入学式に中止や延期等の影響があった学年に属します。15の春に震災を経験し、いま晴れて社会に出て行く青年たちを心から祝福いたします」とコメントした。