19日から東京の会場を中心にオンラインで開催された第9回アジア宗教者平和会議(ACRP)東京大会が22日、大会宣言文を採択して閉幕した。日本で初めて開催された今大会には、事前に開かれた青年大会、女性大会を含め、6日間で21カ国から計約1500人が参加。「行動するアジアの宗教コミュニティ―誰一人取り残さない、健やかで豊かなアジアの平和をめざして―」をメインテーマに、さまざまな内容の全体会議や分科会、特別セッションが行われた。
ACRPは、2014年の第8回大会(韓国・仁川)以降、「人身取引防止」「いのちの尊厳教育」「平和構築と和解」「環境問題」「青年リーダー育成」の5つをフラッグシップ・プロジェクトとして定め推進してきた。2日目の全体会議2では、各フラッグシップ・プロジェクトの成果と課題が報告され、今後5年間の活動計画などが分かち合われた。また、これらのフラッグシップ・プロジェクト推進のために、世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会が3千万円を寄付することも発表された。
同じく2日目に開かれた全体会議3では、「新型コロナウイルス感染症とアジアの宗教コミュニティ」をテーマに、基調講演を含め7人が発題。日本からは、世界保健機構(WHO)ユニバーサルヘルスカバレッジ(UHC)親善大使で参院議員の武見敬三氏と、WCRP日本委平和研究所副所長で立教大学総長の西原廉太氏(日本聖公会中部教区主教)がスピーカーとして立った。
大会では、分科会や特別セッションで、ミャンマーや朝鮮半島、アフガニスタンの情勢を扱い、現地の宗教者や専門家、NGO関係者から各地の状況を聞いた。特に2月に軍事クーデターが発生して以来混乱が続くミャンマーと、8月末にタリバンが政権を掌握したアフガニスタンについては、一般市民が厳しい状況にあることが報告され、人道支援の必要性が強調された。
閉会式では新役員が発表され、新実務議長にはオーストラリアのRMIT大学名誉教授でカトリックのデズモンド・カーヒル氏が、新事務総長にはWCRP日本委事務局長で立正佼成会会員の篠原祥哲(よしのり)氏が選出された。カーヒル氏は、2000年からWCRPオーストラリア議長、08年から同共同会長を務め、選出前にはACRPの副実務議長を務めるなど、ACRP、WCRPの働きに長年にわたって貢献してきた。05年からWCRP日本委に関わっている篠原氏は、軍縮や気候変動、難民、開発、人権などの問題を担当。東日本大震災では、WCRP仙台事務所所長として震災復興支援に従事した。この他、日本からはWCRP日本委評議員で天台宗妙法院門跡門主の杉谷義純氏が共同会長に、WCRP日本委会長で立正佼成会会長の庭野日鑛(にちこう)氏が名誉会長に選出された。
採択された宣言文は、「アジアは依然として平和ではなく、アジア諸国間のさらなる和解のための真の努力が必要」だとし、現在も進行する軍拡競争や核兵器の脅威、分断が続く朝鮮半島、アジアの多くの地域で見られる国家内・国家間の紛争や対立などに言及。経済不況や経済格差、人身売買、児童労働、児童婚、気候変動などの問題にも触れ、「アジアにおける私たちの挑戦」として捉えている。その上で、今大会は「ACRPを具体的な行動へと進化させる歴史的な転機となった」とし、12項目の提言を示し、その実行を決意している。
閉会式では、宣言文が読み上げられた後、ACRPシニアアドバイザーの神谷昌道氏がビジョンメッセージを発表。ACRPの新たな5カ年計画の6つの目標を、「フラッグシップ・プロジェクトの推進」「効果的なパートナーシップの構築」「男女共同参画の推進」「宗教間教育の推進」「諸宗教評議会(IRC)開発への関与」「資金調達の促進」と示した。最後には、キリスト教を含む「諸宗教の祈り」がささげられた。