米国福音ルーテル教会(ELCA)で、トランスジェンダーであることを公言している牧師が同教団としては初めて監督に選出された。
監督に選出されたのは、サンフランシスコにある小さな進歩的な教会であるグレース福音ルーテル教会を牧会しているメーガン・ローラー牧師。2006年にELCAで初めてトランスジェンダーの牧師として按手を受け、自身に対する代名詞として、性的に中立な「彼ら(they)」という代名詞を単数形で用いていることで知られている。
監督に選出したのは、ELCAのシエラ・パシフィック・シノッド。就任式は9月11日にサンフランシスコ郊外のウォルナットクリークにある聖マタイ・ルーテル教会で行われる予定。
ローラ牧師は監督選出を受け自身のツイッター(英語)に、「第1ニカイア公会議が取った最初の行動は、トランスジェンダーの牧師や監督の指導的役割を制限しようとするものでした。シエラ・パシフィック・シノッドがこうした制限や、人種的、性的マイノリティーの牧師たちが遭遇するその他のハードルを取り除き始めていることを感謝します」と投稿した。
ローラー牧師がチャプレンを務めるサンフランシスコ警察もこれを歓迎し、ツイッター(英語)に「私たちは皆、私たちの同僚であるメーガン・ローラー被選監督を誇りに思っています。米国の主要なキリスト教の教派で、トランスジェンダーであることを公言している人物として初めて監督にまで昇格するという歴史をつくりました。おめでとう、ローラー牧師。これからも素晴らしいことを続けてください!」と投稿した。
一方、米キリスト教保守系シンクタンク「宗教民主主義協会」(IRD)のジェフ・ウォルトン氏は、ローラー牧師が第1ニカイア公会議に言及したことを問題視し、IRDのブログ(英語)で次のように指摘した。
「トランスジェンダーの聖職者を弾圧したという主張は、歴史的に見て考えられません。ローラー牧師は出典を引用していません。しかしおそらく、自ら去勢しない限り、宦官(かんがん)も司祭になれると宣言した第1ニカイア公会議のカノン(教会法)第1条を参照していると思われます」
ELCAは米国では最大のルーテル派の教団だが、そのリベラルな方向性のためこれまでに数百もの教会が離脱してきた。IRDによると、ELCAは同性愛者の聖職者を容認するようになった2000年代後半から、会員数が100万人以上減少している。