米連邦教育省市民権局は、男子生徒も女子用のトイレやシャワー室、更衣室の利用を許可されるべきだとする、シカゴ地域の高校に対する米国自由人権協会(ACLU)の苦情申し立てを審議している。結果によっては、高校は連邦政府からの補助金を失う可能性がある。
地元紙「デイリー・ヘラルド」によると、教育省のドリー・ノルト報道官は10月27日、声明を発表し、市民権局の調査は「トランスジェンダーの高校生に対し、学区が女子ロッカー室の利用を拒否したことは差別に当たるという苦情をもとに」行われていると述べた。
ACLUは、体育の授業やスポーツ活動の際の女子ロッカー室の利用を拒否されたのは、パラティン・シャンバーグ高校211学区による違法な差別だとして、トランスジェンダーの(元男子の)女子生徒の代理として苦情を申し立てた。
「市民権局の調査によって、学区が体育の授業やスポーツ活動の際、当該学生に女子ロッカー室の利用を許可しなかったことが明らかになった」と声明は述べている。市民権局によると、審議が完了した後に決定を下すという。
211学区のダニエル・ケイツ教育長は学区のニュースレターで、「連邦政府の教育補助金の停止の可能性を含め、訴訟や強制執行の手続きが、市民権局によってなされるかもしれません」と述べた。
この問題を解決するために、学区はロッカー室内に、理由を問わず誰にも見られずに着替えをしたい全ての生徒のための個室の更衣ブースを設けることを提案した。しかし市民権局は、トランスジェンダーの生徒にとって利用が義務になりかねないため、この提案は受け入れられないと回答した。
キリスト教保守派の法律家の非営利団体「自由防衛同盟」(ADF)と、シカゴを拠点とする法律関係の非営利団体「トマス・モア協会」は連名で学区に書簡を送り、異性のトイレやロッカー室の利用を許可することは、生徒のプライバシーと安全を深刻に侵害し、親の教育権を傷つけ、宗教を持つ生徒が自由にそれを実践する権利を侵害し、学習環境を著しく損なう可能性があると指摘した。
「学区がそのような活動を認めることによって、学校自体を不法行為にさらす危険があることは明白です。従って、学区は異性の生徒とトイレやロッカー室を共有することを強要させるような施策を拒否すべきです」と書簡にはある。
ADFによると、学校は、トランスジェンダーの生徒を含む特別なプライバシーの配慮を要する生徒に対し便宜を図ることができる一方、他の生徒のプライバシーや自由に実践する権利、また子に対する親の教育権も保護することができるという。
トマス・モア協会のピーター・ブリーン氏は、「今日、子どもたちには(この問題に)対処するのに十分なものが備えられています」と言い、「ここ1、2年間で211号学区の少女たちがそうだったように、子どもたちを、異性の前で着替えなければならなくなるのかと悩ませるべきではありません」と述べた。
ブリーン氏はまた、「この論争は実のところ、私たちが生徒たちに政治的なものの見方を押し付けるつもりなのか、あるいは政治的な見方よりも教育面を優先し、思春期の生徒たちのプライバシーを尊重してこの時期を歩む手助けをしていくのかというところに落ち着きます」と指摘した。