2033年までに世界の全言語に聖書を翻訳することを目指して、聖書関連の10団体が合同で、聖句一節の翻訳から支援できる寄付キャンペーン「I Want to Know」を始めた。キャンペーンは、聖書協会世界連盟やウィクリフ聖書翻訳協会、米国聖書協会、英語訳聖書「NIV」の版元として知られるビブリカなど、10の聖書関連団体でつくる「illumiNations(イルミネーションズ)」が主催するもの。
イルミネーションズによると、現在世界では7千以上の言語が使用されている。しかしそのうち、3832言語ではまだ聖書の翻訳が一部しか完成していない、あるいは翻訳が全く行われていない。特に一節の聖句さえも翻訳されていない言語は2千を超えるという。
イルミネーションズは、世界各地で行われている聖書翻訳事業を紹介。その中から支援したい言語の翻訳事業を選んで寄付することができる。支援先を指定しない寄付も可能で、毎月定額の寄付をすることもできる。各翻訳事業のページでは、該当言語を使用している話者数や翻訳の進捗度、事業開始年、完成見込み年、不足資金額などを確認することができる。日本関連では、日本手話訳聖書のプロジェクト(英語)が掲載されている。
聖書翻訳のコストは、翻訳事業の複雑さや状況により異なるが、イルミネーションズは平均で、聖句1節の翻訳に35ドル(約3800円)、1章の翻訳に1千ドル(約11万円)、新約聖書の翻訳に42万ドル(約4600万円)、聖書全巻の翻訳に96万ドル(約1億500万円)が必要だとしている。
イルミネーションズは、2033年までに世界のすべての人が母語で聖書を読めるように翻訳事業を進めることを目標としており、これは世界人口の95%が聖書全巻を、99・96%が新約聖書を、100%が聖書の少なくとも一部を母語で読むことができるようになることを意味する。
米小売チェーン「ホービー・ロビー」のミニストリー投資部門責任者で、イルミネーションズの熱心なサポーターであるマート・グリーン氏は、「10億人もの人々が、いまだに神の言葉を知らないのです。私たちは大宣教命令を果たし、この世代の『聖書の貧困』を根絶することができます」と話す。ホービー・ロビーは創業者が熱心なクリスチャンとして知られており、米首都ワシントンにある聖書博物館などにも寄付を行っている。
「聖書をすべての人のためにすべての言語に翻訳するという目標は、何世代にもわたって『ゴリアテ』のようなものでした。しかし今、私たちはこの大きな勝負の瀬戸際にいます。今後12年以内に、すべての人が母語で聖書の少なくとも一部を読むことができるようになるのです」
キャンペーンの公式ページ(英語)では、母語訳の聖書を手にした人、また聖書全巻の翻訳の完成を心待ちにしている人々の声が紹介されている。
米アラスカ州などに住む先住民族ユピック出身のウォーキーさんは、母親が初めて聖書のメッセージをユピック語で理解した瞬間のことを振り返って次のように話す。「母が亡くなる前、ユピック語で詩編139編を読んであげました。そうしたら母は『ああ、これが私たちにとっての意味なのね!』と言ったのです」
世界各地で行われている聖書翻訳事業の検索はこちら(英語)で可能。イルミネーションズは寄付のほか、キャンペーンをSNSなどでシェアし多くの人々に参加を呼び掛けることも求めている。