米国務省は7日、信教の自由に関して「特に懸念のある国」(CPC)として、昨年から指定している9カ国に加え、新たにナイジェリアを指定した。ナイジェリアがCPCに指定されるのはこれが初めて。近年、ボコ・ハラムやイスラム国西アフリカ州(ISWAP)などのイスラム過激派組織による襲撃が相次いでおり、米国際宗教自由委員会(USCIRF)が4月、指定を勧告していた。
発表(英語)によると、米国務省が今年CPCに指定したのは、ミャンマー、中国、エリトリア、イラン、ナイジェリア、北朝鮮、パキスタン、サウジアラビア、タジキスタン、トルクメニスタンの10カ国。CPCの指定は、米国の「国際信教の自由法」(IRFA、1998年)に基づくもので、「組織的かつ現在進行中の甚大な信教の自由の侵害」を行っている、または容認している国を指定するもの。
米国務省はまた、「深刻な信教の自由の侵害」を行っている、または容認している国を、CPCよりも一段階低い「特別監視リスト」(SWL)に指定しており、今年はコモロ、キューバ、ニカラグア、ロシアの4カ国を昨年に引き続き指定した。ナイジェリアは昨年SWLに指定されていたが、今年さらにCPCに引き上げられた形。
一方、昨年SWLに指定されていたスーダンとウズベキスタンは、「顕著かつ具体的な前進」があったとして指定が解除された。マイク・ポンペオ国務長官は「彼らの勇気ある法改正、また慣行の改革は、他の国々の模範となるもの」と述べ、両国の指定解除を歓迎した。
米国務省はこの他、IRFAの改正法である「フランク・R・ウルフ国際信教の自由法」(2016年)に基づき「特に懸念のある組織」(EPC)の指定も行っており、今年は次の10組織(国名・地域名は主な活動地)を指定した。いずれもイスラム過激派で、このうちシリアのサラフィー・ジハード主義の反政府武装組織であるタハリール・アルシャーム機構(HTS)は初めての指定となった。
- アルシャバブ(ソマリア)
- アルカイダ(パキスタン)
- ボコ・ハラム(ナイジェリア)
- タハリール・アルシャーム機構(HTS、シリア)
- フーシ(イエメン)
- イスラム国(IS、イラク、シリア)
- 大サハラのイスラム国(ISGS、サハラ地域)
- イスラム国西アフリカ州(ISWAP、ナイジェリア)
- タリバン(アフガニスタン)
- イスラムとムスリムの支援団(JNIM、サハラ地域)
昨年EPCに指定されていた、アラビア半島のアルカイダ(AQAP、イエメン)とイスラム国ホラサン州(ISKP、アフガニスタン)については、両組織がかつて支配していた領土を完全に失ったため、指定基準からは外れた。
USCIRFは、米国務省が勧告に従いナイジェリアをCPCに指定したことを歓迎。声明(英語)では、「ナイジェリアは世俗的な民主主義国家で初めてCPCに指定された国であり、あらゆる形態の政府が信教の自由を尊重するよう警戒しなければならないことを示している」とした。
USCIRFは4月、今年SWLから除外されたスーダンとウズベキスタンについても指定を勧告していたが、トニー・パーキンス副議長は「この2カ国で歴史的な前進があったことは否定できない」とし、「この2カ国の前進が、世界の他の地域において前向きな変化を促すことを願っている」と語った。
USCIRFはこの他、今年CPCに指定された10カ国に加え、インド、ロシア、シリア、ベトナムの4カ国もCPCに指定するよう勧告していた。またSWLには、今年指定された4カ国に加え、アフガニスタン、アルジェリア、アゼルバイジャン、バーレーン、中央アフリカ、エジプト、インドネシア、イラク、カザフスタン、マレーシア、スーダン、トルコ、ウズベキスタンの13カ国を指定するよう勧告していた。
■ 米国務省「特に懸念のある国」(CPC)
ミャンマー、中国、エリトリア、イラン、ナイジェリア、北朝鮮、パキスタン、サウジアラビア、タジキスタン、トルクメニスタン
■ 米国務省「特別監視リスト」(SWL)
コモロ、キューバ、ニカラグア、ロシア
■ 米国務省「特に懸念のある組織」(EPC)
アルシャバブ、アルカイダ、ボコ・ハラム、タハリール・アルシャーム機構(HTS)、フーシ、イスラム国(IS)、大サハラのイスラム国(ISGS)、イスラム国西アフリカ州(ISWAP)、タリバン、イスラムとムスリムの支援団(JNIM)
※ いずれも2020年12月7日付