2018年に99歳で亡くなった世界的な大衆伝道者、ビリー・グラハム氏の等身大の彫像が、米首都ワシントンの連邦議会議事堂内に設置される見通しとなった。
連邦議会議事堂には、全米50州の各州を代表する人物の彫像を展示する「国立彫像ホールコレクション」がある。彫像は各州2体で計100体が展示されており、グラハム氏の出身地であるノースカロライナ州の選考委員会は7月29日、同州の彫像2体のうち1体をグラハム氏の彫像に差し替えることを承認した。
RNS通信(英語)によると、グラハム氏の彫像を手掛けるのは、米芸術家のチャス・ファーガン氏。ファーガン氏はホワイトハウス歴史協会などの依頼で、米国の歴代大統領45人の肖像画を描いたことで知られており、これまでも、ワシントンにあるヨハネ・パウロ2世大聖堂のローマ教皇ヨハネ・パウロ2世の彫像や、ワシントン大聖堂のマザー・テレサの彫像など、キリスト教関係の作品も手掛けた実績がある。
現在、国立彫像ホールコレクションで展示されているノースカロライナ州の彫像は、共に同州の知事経験者であるゼブロン・バンス(1830~1894)とチャールズ・エイコック(1859~1912)の2人のもの。バンスは南北戦争時には南軍の士官となり、同州選出の連邦上院議員も務めた。エイコックは同州の教育制度改良に多大な貢献をしたとして長年、その功績が称えられてきた人物。しかし、エイコックについては、黒人主体の自治政府を転覆させた同州ウィルミントンにおけるクーデーター(1898年)の首謀者の一人であったこともあり、最近は人種問題に絡み、評価の見直しが行われている。
グラハム氏の彫像については、グラハム氏の生前から設置を望む声があり、同州選出のダン・ソウセク連邦上院議員(当時)が、設置に向けて働き掛けるなどしていた。RNS通信によると、グラハム氏の息子で同じく伝道者のフランクリン氏は、すでに彫像の完成予定図を見ており、それは聖書を手にした1960年代のグラハム氏の姿をモデルにしたものだという。
フランクリン氏は、「父は人々がこのような形で自分のことを考えてくれることをとても喜んでいるでしょう」と歓迎。一方で「しかし、父は人々が自分自身ではなく、神に栄光を帰することを望んでいるでしょう」とも話している。
彫像設置には65万ドル(約6800万円)の費用が必要で、ノースカロライナ州とビリー・グラハム伝道協会が現在、協力して募金を行っている。
彫像はまず粘土製のものが制作され、連邦議会の委員会による審査通過後に鋳造が行われる。米下院では民主党が主導する歳出委員会が7月初めに提出した法案で、国立彫像ホールコレクションから撤去すべき彫像として、エイコックの彫像も挙げられている。そのため、グラハム氏の彫像への差し替えは連邦議会においても承認されるとみられている。