20世紀最大の伝道者といわれ、昨年2月に99歳で召天したビリー・グラハム氏の遺言的著作『天のふるさとに近づきつつ』(原題:Nearing Home、翻訳:福江等〔ひとし〕、イーグレープ)が、21日に発売される。全世界185の国と地域で2億1500万人近くにキリストの福音を伝えてきた著者が、聖書を土台に人生の終活について語る。終活本の決定版というにふさわしい一冊だ。
原作は2011年10月に米国で出版され、ニューヨーク・タイムズ紙のベストセラーに選ばれるなど、大きな反響を呼んだ。本書でグラハム氏は、聖書から人生の土台となるような真理を引用しつつ、老いという問題を探求していく。「長い人生を与えられれば、老いることは自然なことです。しかし、豊かな心をもって老いるかどうかは、その人の選択です」と指摘する。
本書を執筆当時、92歳だったグラハム氏は「序」で次のように語る。「私はこれほど長生きするとは思ってもみませんでした。これまでの人生では、クリスチャンとしていかに自我に死ぬべきか、と教えられてきました。しかし、死ぬ前の年月をどのように生きるべきか、だれも教えてくれた人はいませんでした。教えてくれていれば良かったのに、と思います。それは私が今、老人であるからです。そして私の言う言葉を信じてほしいのですが、老人であることは容易なことではありません」
グラハム氏は、老年に対する神の意図や、老人の直面する恐れや孤独、衰えにどう対処するかなどについて、本書で具体的に提言している。最終章「昔と今」では、天国に関する重要な真理を分かりやすく説明し、「確信をもって御国に近づこう」と読者を励ます。
東京キリスト教学園名誉理事長の吉持章氏は推薦の言葉で、「本書の内容はすべてグラハム博士自身が体験された道の記録であり、読者の心に強く迫ってくる内容です。私も読み進むうちに『その日』に備えて遺言書を書き始めたからです。本書はグラハム博士の体験から生まれた人生のガイドブックと言えましょう」と述べている。
老人だけでなく、本書は「あらゆる年齢層の人々のために書いたもの」とグラハム氏は語る。「読者の方々を私と一緒に冒険にお誘いします。それは老いの現実を探るだけでなく、希望と達成感、そして喜びをも見出す冒険です。老いというものを神の視点から見つめ、私たちが日々支えられている神の力を見出すなら、そういったものを手に入れることができます」
終活に関する著書がある、屯田キリスト教会協力牧師の込堂(こみどう)一博氏は、「『霊的存在である人間』という視点に立脚し、バイブルを土台として老いをどう生きるか、死後に真の希望はあるのかを指し示す、骨太の究極の終活本といえる。翻訳も分かりやすくて読みやすい。すべての年齢層に安心して勧めることができる」と太鼓判を押す。
全10章の構成で、「人生から引退しない」「人生の黄金期を考える」「力は衰えても強く生きる」など各章のテーマも興味深い。出版元のイーグレープによると、すでに口コミで評判が広がり、予約注文が増えているほか、早くも地域の教会で読書会を計画している牧師もいるという。
四六判で252ページ、税込み2160円。予約注文は、アマゾン、もしくは全国のキリスト教書店、一般書店で受け付けている。