ナイジェリア現地の人権団体がまとめた報告によると、同国では今年上半期に、キリスト教徒1202人がフラニ族やイスラム過激派に殺害された。負傷者も数千人に上り、成人女性や未成年の少女を狙った拉致事件も急増しているという。
ナイジェリアの人権団体「インターソサエティー」の報告(英語)によると、今年1月から6月までの6カ月間に、イスラム教徒が主体の遊牧民「フラニ族」の過激派は、キリスト教徒812人を殺害した。また「ボコ・ハラム」や「イスラム国西アフリカ州」(ISWAP)などのイスラム過激派組織はキリスト教徒390人を殺害。この半年間で、無防備のキリスト教徒、計1202人が犠牲になった。2009年7月から集計すると、同国ではこの11年間に、約3万2千人のキリスト教徒が過激派により命を奪われたという。
インターソサエティーは、これらの過激派を「ジェノサイド(大量虐殺)の域に達している」ジハード主義者たちだと非難。命を奪われた1202人の他にも数千人の負傷者がおり、中には負ったけがにより、一生不自由な体で生きなければならない者もいる。
「キリスト教の礼拝所や学習施設が何百軒も破壊されたり放火されたりしています。同様に、キリスト教徒が所有する何千軒もの住居、農地、所有物が被害を受けています」
フラニ族による襲撃は、土地や資源をめぐる争いの一部だと主張する人もいるが、インターソサエティーはそれを否定し、明らかにキリスト教徒が狙われていると訴えている。
「ジハード主義の遊牧民(フラニ族)による襲撃がある地域はすべて、現在に至るまで、キリスト教徒のコミュニティーがあるところです。これらのジハード主義の遊牧民により、イスラム教徒が殺されたり、彼らの土地や農地、住居が奪われたり、モスクが破壊あるいは放火されたりしたことを示す証拠は皆無です」
インターソサエティーはこの他、成人女性や未成年の少女を狙った拉致事件が急増していると警告している。報告によると、拉致された女性や少女が逃げ出すことはほとんど不可能で、拉致後彼女たちはイスラム教に改宗させられ、イスラム教徒の男性と強制的に結婚させられたり、性奴隷として扱われたりするという。
米キリスト教メディア「クリスチャンポスト」(英語)によると、今月19日には、ナイジェリア中部カドゥナ州の村で結婚式のパーティーが行われていたところを、フラニ族とみられる武装集団が襲撃。21人が死亡、30人が負傷する事件が起こった。
さらに翌20日には、同州の別の村が襲撃され、少なくとも10人が死亡、7人が負傷した。ナイジェリア・キリスト教協会(CAN)の地元支部で副議長を務めるアイザック・アンゴ・マカマ牧師は、ナイジェリアの一般紙「デイリー・ポスト」(英語)の取材に応じ、全部で50人ほどの襲撃者が銃を乱射し、家々を放火していったと語った。
キリスト教迫害監視団体「オープン・ドアーズ」は、キリスト教徒に対する迫害のひどい上位50カ国をまとめた「ワールド・ウォッチ・リスト」を毎年発表しており、ナイジェリアは世界で12番目に迫害がひどい国として位置付けられている。