東日本大震災から満9年となった11日、カトリック東京大司教区の菊地功大司教は、地震発生の午後2時46分に合わせて配信した動画でメッセージを語った。菊地大司教は、ローマ教皇フランシスコが昨年11月の日本訪問時に東日本大震災の被災者との集いで語った「展望と希望を回復させてくれる友人や兄弟姉妹との出会いが不可欠」との言葉を引用し、「東北の方々を家族の一員として、互いに支え合う活動をこれからも継続してまいります」と述べた。
動画は、11日の開催を予定していた追悼・復興祈念ミサが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止になったことを受けて企画されたもので、午後2時20分から約40分間ユーチューブで配信された。昨年11月の集いで3人の被災者が語った証言と教皇のメッセージを映像で振り返り、午後2時46分に合わせて1分間の黙祷をささげた後、菊地大司教がメッセージを伝えた。
菊地大司教は、「この9年間は東北の方々との歩みが、『復興』とは『元に戻す』ことではなくて『新たな希望を生み出し歩み続ける』ことだと私たちに教えています」と語り、昨年11月の訪日時に教皇が日本の司教団との対話の中で、東北の被災者について述べた言葉を紹介した。
今なお続く彼らの苦しみを見ると、人として、そしてキリスト信者として私たちに課せられた義務をはっきり自覚させられます。体や心に苦しみを抱えている人を助け、希望と癒やしと和解という福音のメッセージをすべての人に伝えるという義務です。
教皇は、東京で開催された被災者との集いでは、次のように語った。
食料、衣服、安全な場所といった必需品がなければ、尊厳ある生活を送ることはできません。生活再建を果たすためには、最低限必要なものがあり、そのために地域コミュニティーの支援と援助を受ける必要があるのです。一人で「復興」できる人はどこにもいません。誰も一人では再出発できません。町の復興を助ける人だけでなく、展望と希望を回復させてくれる友人や兄弟姉妹との出会いが不可欠です。
その上で教皇は、現代社会にまん延する利己主義と無関心を「悪」と指摘し、「家族の一人が苦しめば、家族全員が共に苦しむという自覚を持てるよう力を合わせることが急務です」と呼び掛けた。
菊地大司教は、いまだに4万8千人を超える人々が避難生活を強いられている現状について、「これほど多くの方が普通の生活を取り戻すことができない、そういう状況が続いていることを、私たちは心に留めなくてはなりません」と述べた。特に、福島第1原子力発電所事故の影響が残る福島県内では、復興の歩みにさらなる時間を要し、公式の統計に表れない避難者も全国に多数いることに言及。「人生の道筋が、予想もしなかった困難な道となってしまった多くの方々が忘れ去られることのないように、カトリック教会のネットワークを生かしながら、共に歩み続けたい」と話した。