第92回アカデミー賞のノミネート(候補)作品が13日、発表(英語)され、キリスト教映画の「ブレイクスルー(原題)」と、現教皇フランシスコと前教皇ベネディクト16世の対話を描いた「2人のローマ教皇」がノミネートされた。
「ブレイクスルー」は、作中で歌われている「I'm Standing With You」により歌曲賞でノミネート。同曲は多数の受賞歴がある米作詞家のダイアン・ウォーレンが作詞し、作中では主演女優のクリッシー・メッツが歌っている。「2人のローマ教皇」は、主演男優賞(ジョナサン・プライス、フランシスコ役)、助演男優賞(アンソニー・ホプキンス、ベネディクト16世役)、脚色賞の3部門でノミネートされた。
「ブレイクスルー」は、致命的な事故に遭遇した14歳の少年ジョン・スミスと、ジョンを養子として育ててきた母ジョイスが、祈りと聖霊の力に寄り頼むことで体験した奇跡を描いた作品。ジョンは一時死亡と診断されるが、ジョイスの必死の祈りが応えられ、息を吹き返すという実話に基づいた物語だ。(関連記事:死んだ息子が再び息を フォックス2000が最初で最後のキリスト教映画「ブレイクスルー」)
原作はジョイス自身が書いた『インポッシブル(原題)』(英語)。昨年4月にイースター(復活祭)に合わせて米国で公開され、累計興行収入は全米で4千万ドル(約44億円)、世界では5千万ドル(約55億円)を達成。2018年公開の「パウロ 愛と赦(ゆる)しの物語」(累計興行収入:全米1760万ドル〔約19億円〕、世界2300万ドル〔約25億円〕)を大きく上回る人気を集めた。
「2人のローマ教皇」は、現職の教皇としては約700年ぶりに自らの意思で引退を表明した前教皇ベネディクト16世と、初のアメリカ大陸出身者、初のイエズス会出身者として就任した現教皇フランシスコの歴史的な交代劇を描いた作品。それぞれ保守派と進歩派で考えが異なるとされている両教皇の交代がどのようにして実現したのか。交代劇1年前に行われた両教皇による非公開の会談を、インタビューや書籍などで公開されている2人の実際の発言をそのままセリフに用いて対話形式に構成することで描いている。(関連記事:映画「2人のローマ教皇」 歴史的交代劇の裏舞台、2人の教皇は何を語り合ったのか)
「2人のローマ教皇」は、米動画配信会社ネットフリックス製作の作品。ネットフリックス作品は今回、計24部門でノミネートし、製作会社別では、ウォルト・ディズニー(23部門)やソニー・ピクチャーズ(20部門)、ワーナー・ブラザーズ(12部門)などを抑えて最多となった。「2人のローマ教皇」のほかに、マーティン・スコセッシ監督のギャング映画「アイリッシュマン」(10部門)やノア・バームバック監督が夫婦の離婚をコメディータッチで描いた「マリッジ・ストーリー」(6部門)などが、ネットフリックス作品でノミネートされている。
一方、最多ノミネートとなったのは、バットマンの宿敵ジョーカーの誕生を描いた「ジョーカー」で11部門。続いて、「アイリッシュマン」、第1次世界大戦が舞台の米英合作映画「1917 命をかけた伝令」、米カルト集団にハリウッド女優が殺害された事件を描いた「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」の3作品が10部門でノミネートされた。
カンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールを受賞したポン・ジュノ監督の「パラサイト 半地下の家族」は、韓国映画初にもかかわらず6部門でノミネート。この他、日本では今月17日から公開される「ジョジョ・ラビット」、ピューリタン一家の4姉妹を描いた19世紀の名作『若草物語』を原作にした「ストーリー・オブ・マイライフ / わたしの若草物語」が6部門でノミネートされた。
受賞作品の発表・授賞式は2月9日(日本時間10日)に米ロサンゼルスで行われる。