世界に12億人の信徒を擁するカトリック教会。そのトップであった前ローマ教皇ベネディクト16世は2013年、突如として、現職の教皇としては約700年ぶりに自らの意思で引退することを表明した。そして代わりに、現教皇フランシスコが史上初のアメリカ大陸出身の教皇として、また史上初のイエズス会出身の教皇として就任した。この歴史的な教皇交代劇の裏舞台を描いた映画「2人のローマ教皇」の配信が、20日からネットフリックスで始まった。
それぞれ保守派と進歩派で考え方が異なっていた2人の教皇。しかし2人は交代劇の1年前、非公開の会談をしている。2人は一体、そこで何を語り合ったのか。「2人のローマ教皇」は、インタビューや書籍で公開されている2人の実際の発言をそのままセリフとして用い、対話形式に構成することで、この歴史的な教皇交代劇の裏舞台を描いている。
ドイツ出身の厳格な保守派として知られる前教皇ベネディクト16世を演じたのは、アカデミー賞主要全5部門を独占した「羊たちの沈黙」で主演を務めたアンソニー・ホプキンス。一方、自らも質素な生活を率先し、「庶民派」として広く親しまれているアルゼンチン出身の現教皇フランシスコは、「天才作家の妻 40年目の真実」のジョナサン・プライスが演じた。脚本は「ウィンストン・チャーチル / ヒトラーから世界を救った男」「博士と彼女のセオリー」で脚本を手掛けたアンソニー・マクカーテン。そして、「シティ・オブ・ゴッド」「ナイロビの蜂」のフェルナンド・メイレレス監督がメガホンを執った。
撮影は主にイタリアとアルゼンチンで行われたが、許可が取れなかったため、バチカンで撮影は行われていない。そのため、ローマの映画スタジオでバチカンの一部を再現し、原寸大のシスティーナ礼拝堂を2カ月かけて用意するなどした。
時間は125分。すでにゴールデン・グローブ賞の作品賞、主演男優賞(プライス)、助演男優賞(ホプキンス)の3部門でノミネートされており、日本では13日から19日まで、一部の劇場で限定公開されていた。
■ あらすじ
2012年、カトリック教会の方針に不満を抱くホルヘ・マリオ・ベルゴリオ枢機卿(現教皇フランシスコ)は、当時の教皇ベネディクト16世に辞任を申し入れる。ところが、スキャンダルに直面し自信を失っていた教皇ベネディクト16世は、ベルゴリオ枢機卿の辞任を許可せず、ローマに呼び付ける。ベルゴリオ枢機卿から辛辣な批判を受ける教皇ベネディクト16世だったが、彼を自分の後継者と見定め、カトリック教会を根幹から揺るがす秘密を打ち明ける――。バチカンを舞台にせめぎ合う伝統と改革、そして罪と赦(ゆる)し。考え方のまったく異なる2人が、世界12億人の信徒を擁するカトリック教会の未来を築くため、互いの過去を振り返りながら理解し合っていく。
■ 映画「2人のローマ教皇」予告編