英国国教会(聖公会)は7日、英中部ヨークで開催した総会(会期:5~9日)で、聖職の相互承認などを含む英国メソジスト教会とのさらなる交流に向け、必要となる関係文書の草稿作成に着手することを承認した。文書には、両教会の新しい関係を概説する「正式な宣言」や、聖職按手に関わる文書、両教会の聖職が双方の教会で奉仕するためのガイドラインなどが含まれる。今後の進捗状況は、主教会が来年の総会で報告するという。
英国国教会側で文書の草稿作成を担うことになる信仰・職位委員会の委員長で、総会における議論を導いたクリストファー・コックスワース主教(コベントリー教区)は、必要文書の起草が承認されたことで、両教会に「歴史的な機会」がもたらされると述べた。
「私の祈りは、決定がもたらす影響を十分に認識した上で、明確かつ十分な情報に基づいて決定を下すことです。それは歴史的に親密な親類関係にあり、協定を結んだパートナーでもある英国国教会と英国メソジスト教会の関係のためであり、英国国教会とアングリカン・コミュニオン(全世界聖公会)が100年費やした結束の固さにより、キリストの体の一致を取り戻すためでもあります」
必要文書の起草は、英国国教会のトップであるカンタベリー大主教ジャスティン・ウェルビーも支持している。ウェルビー氏は、総会で次のように述べた。
「私はこの件において前進することを固く心に決めています。それは福音のためであり、教会のためであり、私たちが遣わされている世界のためです」
総会で承認された議案は、「(両教会が)共に使命を果たすことを最優先とする」としているが、同時に「英国国教会の一部に、今回の議案をめぐる懸念が残っている」ことも認めている。その懸念の一つは、両教会における司祭(priest、英国国教会)・長老(presbyter、英国メソジスト教会)の位置付けの違いだ。
英国国教会の中でもカトリック教会に近いグループ「聖公会とカトリックの未来」(ACF、英語)は総会に先立ち、その懸念は議案内に記されていた勧告によっても和らげられておらず、「教会のより大きな一致に役立つよりは、むしろ教会をさらに分裂させることになる」と述べていた。
「言い難いことかもしれないが、英国国教会は英国メソジスト教会の長老が、英国国教会の司祭とまったく同等であるという立場を取っていない。そのことは英国国教会の慣習から明らかだ」
英国国教会とスコットランド聖公会の保守派グループ「フォーワード・イン・フェイス」(FIF、英語)もACFに同調した。提出された議案の内容はまだ発展段階のものであり、それが総会で審議されることは「時期尚早で無責任」だと批判。「エキュメニカルな便宜のために教理的な誠実さを犠牲にしている今回の議案が、健全で実り豊かであると証明される可能性、究極的には一致に至らしめるものであると証明される可能性は低い」と述べていた。
英国メソジスト教会の他教派対話の責任者として総会に出席したルース・ジー氏は、今回の承認を歓迎し次のように述べた。
「私たちは、総会が(英国メソジスト教会とのさらなる交流のために)教会法に関わる点においてまで動くことを望んでいましたが、総会の一部のメンバーがこの大切な問題をさらに検討することが重要だと考えた理由を理解します。また私たちは、今回の議論に関するカンタベリー大主教の肯定的なコメントと、今回の議案に賛同してくれた圧倒的な投票に励まされました」
「教会と世界のために、また私たちが一つであるようにとのイエス様の祈りに応えて、私たちの旅はこれからも続きます」
英国メソジスト教会の他教派対話の新たな代表として総会で発言したスーザン・ハウドル氏は、次のように述べた。
「私たちは、(2003年に両教会が締結した)協定が持つ豊かな意味について話を聞きました。私は今も興奮状態にあり、今後の可能性に期待しています。英国メソジスト教会を代表して皆さんにお約束します。私たちは今後も共に礼拝し、共に証しし、共に働くことを」
英国メソジスト教会は、英国国教会の司祭であったジョン・ウェスレーが18世紀後半に起こした信仰覚醒運動(メソジスト運動)によって生まれた新たなプロテスタント教派「メソジスト」の英国内の教団。両教会は18世紀後半以降、分裂状態にあったが、1960年代から対話が始まり、2003年には「聖公会・メソジスト協定」を締結。教区レベルでの宣教協力や合同礼拝の実施に向けて共同作業を進めることを確認した。さらに17年には、共同報告書「協定における使命と職務」を発表。両教会の聖職相互承認に向けた協議を行っている(関連記事:英国メソジスト教会で初の『監督』誕生へ 英国国教会と聖職の相互承認に向け協議)。