英国メソジスト教会と英国国教会(聖公会)が、18世紀後半の分裂後初めて、聖職の相互承認に向けた歴史的な協議を進めている。合意に至った場合、英国メソジスト教会では初めて「監督」(bishop ※)が誕生することになる。
英国メソジスト教会は6月22日から29日にかけて、英国第2の都市バーミンガムで年次総会を開催した。総会に提出された報告書「協定おける使命と職務」(英語)によると、両教会が主要な点で合意に至った場合、「18世紀後半に聖公会とメソジスト派が袂(たもと)を分かって以来できなかった、長老職にある聖職(司祭・長老)の交換が可能になる」という。報告書はまた、「神の栄光のために私たち共通の使命を促進し、両教会間における新しい次元の交流を可能にするだろう」としている。米国メソジスト教会とは違い、英国メソジスト教会はこれまで監督制を採用してこなかったため、英国メソジスト教会初の監督が誕生することにもなる。
この報告書は、両教会の教理や職制に関する部門が作成したもので、英北部ヨークで開催される英国国教会の総会でも議論される予定だ。報告書は、両教会間の関係が大きく進展したことの表れであり、内容は2003年に出された「聖公会・メソジスト協定」(英語)に基づいている。
報告書が提示する提案によると、英国メソジスト教会では、年次総会で選出された議長に「総裁監督(President-Bishop)」の称号が与えられることになる。総裁監督は、英国国教会の主教(bishop)を含め、少なくとも3人の主教・監督(bishop)から按手(あんしゅ)を受け、任命される。この原則は、ニカイア公会議に由来する旧来の要件に従うものだという。
総裁監督は、英国メソジスト教会のすべての聖職按手を司式することが例外なく求められ、退任後も永続的な監督としての職務を執行し続けことになる。これには、英国国教会の聖職の任命も含まれる。
このことは、英国メソジスト教会の監督は、初めは1人だけだが、長年にわたって増え続けていくことを意味する。年次総会の議長は毎年交代するが、総裁監督となった者は退任後も監督に留まることになるからだ。
さらに、英国の貴族院(上院)では現在、英国国教会の高位聖職者ら26人が聖職貴族として議席を有しているが、将来、法的に何らかの変更があり、かつ英国メソジスト教会の監督が存命している場合、現在の聖職議員26人の中に、英国メソジスト教会の監督も含めるかを検討する必要が出てくる可能性もある。
今年の英国メソジスト教会年次総会の書記であるキャノン・ギャレス・パウエル氏は、次のように話している。
「メソジスト教会と聖公会は、2教会が使命と職務を共有するフル・コミュニオンに移行するため、一連の提案の実施を急ぐ必要があります。この提案に含まれる総裁監督の方式は、総裁監督が年次総会の重要な職務であるのと同様、ジョン・ウェスレーに代表されるメソジスト教会の指導者が、牧会的監督とキリスト者の使命のために、あらゆるレベルで英国国教会と共同で相互の計画に従事する、極めてメソジスト的な手段なのです」
また、英国国教会の信仰・職制委員会委員長であるクリストファー・コックスワース主教(コベントリー教区)は、次のように言う。
「2つの教会における司祭職を相互交換できるようにする計画を実現するために、慎重かつ想像力豊かに取り組んでいる共同作業部会に感謝しています。この解決策は、歴史的な監督職(episcopate)と、任命された奉仕者としての主教・監督(bishop)の重要性の上に建てられています。提案された計画は、この国の神の使命のために、各教区、各地区、各地域教会が創造的な牧会計画に従事することを可能にするでしょう」
※ 英語ではいずれの教派も「bishop」と表記するが、日本語では「司教」(カトリック)、「主教」(聖公会・正教会)、「監督」(ルーテル派やメソジスト派などの一部のプロテスタント)と表記が分かれる。