英国の「遺産宝くじ基金」による巨額な資金援助により、世界最古のメソジスト礼拝堂の改築計画が着手されることになった。
英国の国営宝くじの収益を文化遺産保護などの目的で分配している「遺産宝くじ基金」は、ジョン・ウェスレー(1703〜91)によって建てられた、英国西部の都市ブリストルにある築276年の建物「ニュールーム」に対し、250万ポンド(約4億5700万円)の補助金を授与することを決めた。これにより、英国メソジスト教会ブリストル教区からの140万ポンド(約2億5600万円)の補助金と併せ、既存の建物の補修を行うほか、新たに3階建ての建物を中庭に建設する。
新しい建物の1階には、訪問客向けに店舗やカフェを設け、2階と3階には、最大で60人を収容できる大規模なマルチメディア講義兼教育室、そしてメソジストの歴史上最大規模となる豊富な資料館や図書館、書庫、オフィスを備える予定だ。
一方、1742年にウェスレーが建てたメソジスト最古の礼拝堂である「ニュールーム」は、エレベーターで各階が結ばれ、ブリストルや、18世紀に英国及び海外で活躍したウェスレーの遺功を反映させたものに全く新しく改装される予定だ。ただし、礼拝堂の内装や建物の装飾はそのままにするという。
「ニュールーム」の管理団体代表で、ブリストル教区長を務めるワード・ジョーンズ牧師は、「われわれは、遺産宝くじ基金がこの貴重な補助金を授与してくださったことを喜んでいます。ニュールームは、275年以上にわたり、ブリストルの中心部に位置しており、われわれは今非常に興奮しながら、この建物の未来に目を向ける機会を持つこととなりました」と語った。「現在の施設の改築が可能となったことで、地元の方々、また学校や大学、世界中からの訪問客をきちんとお迎えすることができます」
ウェスレーが「ニュールーム(New Room)」と呼んだこの建物は、現在世界に約7500万人の会員を持つメソジスト教会の成長の出発点となった。教会の革新を目指したモラビア派のキリスト教徒らとの出会いにより、形式的だった信仰から大きく変わったウェスレーは、英国で信仰復興運動を行い、多くの人々が改心する。多くの信徒が増し加わる中で、ウェスレーは小グループ組織「メソジスト・ソサイエティー」を作り、その集会所として建てたのが「ニュールーム」だった。
「ニュールーム」の教育・伝道担当役員であるマンディ・ブリッグス牧師は、「ウェスレーの元々の焦点は教育にありましたので、私たちはこの分野で事業を発展させたいのです。それと同時に、ここがブリストルの人にとって、歴史と信仰の場所ということを超え、探求し、楽しめ、大切にできる、そういった場所になればよいと思っています」と語った。
「私たちは、学校や大学向けにツアーやワークショップ、講演などを、また新しい教育ルーム内では全ての年齢の方を対象とした各種イベントを提供できるようになります」