東日本大震災で被災し、取り壊された日本基督教団福島教会(福島市)の会堂が、年内にも再建される。教会のホームページでは、再建の様子を逐次公開しており、7月から本格的な工事が始まった新会堂建築はクリスマス前の12月20日には竣工を予定しているという。
福島教会は、1886年(明治19年)に創立された改革長老教会の伝統を受け継ぐ教会で、福島市新町で活動をスタートした。1909年に現在の場所に、建築家ウィリアム・メレル・ヴォーリズの設計による礼拝堂が建立された。実業家でもあったヴォーリズは、「メンソレータム」を広めた近江兄弟社の創立者としても広く名が知られている。
福島教会はその後、太平洋戦争などさまざまな危機も経験したが、2001年に礼拝堂が国の登録有形文化財に指定された。教会の鐘は戦時中に政府に供出するも、紆余曲折を経て米国の戦利品となり返還され、「奇跡の鐘」と呼ばれるようになった。
しかし、11年3月11日に起こった東日本大震災で被災し、屋内外の壁に無数のひびが走り、教会のシンボルだった鐘楼のレンガは崩れ落ち、深い亀裂が入ったため、やむなく取り壊すことになった。また、10年以降牧師のいない状況が続いていた。しかし、11年12月には似田兼司牧師が着任。教会一丸となって会堂再建に歩み出した。
そんな奇跡の連続のような歩みを続けてきた福島教会の新会堂の設計は、旧会堂の設計者であるヴォーリズが設立した、一粒社ヴォーリズ建築事務所が担当。奇妙な縁を感じずにはいられない。
「奇跡の鐘」は7日に設置され、8日の試聴では以前と同じ音色を奏でたという。福島教会によると、献堂式は福島の気候を考慮し、来年3月21日(土・祝)に行う予定だという。