1994年に米国で始まった、エクストリームスポーツと音楽を通して福音を伝えることを目標にする「The Extreme Tour」の日本ツアーが、9日に始まった。米国だけでなく、カナダ、欧州、インドなど世界各地で行われているこのツアーは、昨年初めて日本に上陸。2回目の開催となる今年は、米国からヒップホップグループ「Galley Cat」のリーダー、アンジェロ・ゴンザレス氏をゲストアーティストに迎えた。日本のクリスチャンアーティストとコラボレーションしながら、23日まで全国各地を回る。
最初の舞台となったのは、福島県いわき市。市内にある日本同盟基督教団勿来(なこそ)キリスト福音教会でライブコンサートを行った。前日に福島県入りしたツアーチームは、同県南相馬市にあるライブハウス「Back Beat」で収録を行い、日本のため、被災地のため、南相馬市のため、隣接する福島第一原発のために祈りをもって賛美をささげた。
賛美というと、日本ではクラシック音楽を源流に持つ、落ち着いた音楽がイメージされるだろう。若い世代では、クリスチャンバンドが組まれることも当たり前になってきたが、それでも歌謡曲のような穏やかさを持ち合わせた曲が一般的だ。だが、このツアーで奏でられるのは、ヘビーメタル、パンク、ハードロック、ヒップホップといった「激しい」音楽ばかり。
来月公開される映画『神は死んだのか』の中にも、クリスチャン・ロックバンド「NEWS BOYS」が実名で登場しているが、米国では、こうした音楽もクリスチャン・ミュージックにまとめられ、一つのジャンルとして確立されている。リズミカルでグルーブ感のある音楽とスケートボードなどスピード感のあるエクストリームスポーツは、若者たちのカウンターカルチャーには欠かすことができない。
教会の手の届かない人々への伝道を目的としているこのツアーが、教会で主日にライブを開催するのは珍しく、どのような結果になるのかメンバーの誰もが想像できていなかった。しかし礼拝後、ライブの開始時間直前になると、一度家に帰った教会学校の子どもたちが続々と集まり、会場はロックバンドと観客の小学生たちという不思議な空気に包まれた。
「小さい子どもたちは大きな音がするので耳を塞いでくださいね」とアナウンスが入り、「日本で最初のクリスチャン・ヘビーメタルバンド」だという伊万里音色(Imari Tones)のサウンドが礼拝堂に鳴り響く。子どもたちは驚いて反応に困ってしまうのかと思いきや、男の子たちは「かっこいい!」と目を輝かせ、音楽好きの女の子はスマートフォンでムービーを取り始める。
首都圏の教会では、アーティストライブなどが比較的頻繁に開催されるが、地方の教会では必ずしもそうではなく、飢え渇きを持っている若者は少なくない。今回のツアー期間中に訪れる三重県四日市市にいる一人の女子中学生も、そのうちの一人だ。その少女は、教会に疲れを覚えていたときに、このツアーのスタッフの一人と知り合い、クリスチャン・ロックバンドのCDをプレゼントされた。その時彼女が「都会のクリスチャンは楽しそうでいいな」と言ったのを聞いて、今回のツアーの舞台の一つが四日市市になった。
一人の救いのためにどこへでも出て行き、演奏するのがこのツアーのあり方。それだけでなく、ツアーを通して共に成長することがこのミッションの価値観でもあり、教会でのライブが、クリスチャンの少年・少女に計り知れない影響を与えるのだろうと思わずにはいられない。
子どもたちだけでなく、英語の歌詞と早いリズムについていくのに不慣れなおじさんも、ボーカル・Tak さんの「僕たちの勝利はイエスにある!」という叫びに嬉しそうに手をたたく。「初めてこんな音楽を教会で聞いたけど、いいね。パラダイスに行ったら、こういう元気な賛美を聞きたいね」と感想を話した。
ライブの最後を飾ったアンジェロ・ゴンザレス氏も、即興のラップや、軽快なステップのダンスで会場を沸かせ、群がる子どもたちにステッカーシールを配るなどして交流を図った。子どもたちの心をしっかりとつかみながら、自身の救いの証を交えて歌詞の説明をし、「同性愛、中絶などいろいろな問題がこの世にはある。だけど、僕たちにそれらを裁く権利はない。最終的な裁きをなさる神に全てを委ねて、ただ神の愛が尽きることはないと福音を宣べ伝えるんだ」とメッセージを伝えた。
ツアーは今後、神奈川、東京、三重、広島、香川を巡る予定。Soul of Faith(町田クリスチャンセンター教会会員などによるクリスチャンロックバンド)、CLOD(桜ヶ丘キリスト教会会員などによるクリスチャンロックバンド)、ジーバーズ(日本同盟基督教団巡回牧師によるフォークバンド)などのアーティストが参加予定。
ツアー日程の詳細・問い合わせは、The Extreme Tour(メール:[email protected]、担当:中峰)まで。ツアーの様子や緊急ライブの開催情報はフェイスブックでも随時更新されている。