私と景教との出会い
私と景教との出会いは、名古屋を中心に1985年に発会した東海聖句書道会の初期の展覧会に景教碑の拓本が飾られ、その一つ一つの漢字に魅了されたときからでした。一字一字をよくよく見ると、唐代の優れた書風で書かれ、「素晴らしい」の一言でした。さらに読み進めていくと、聖書や景教(キリスト教)の教え、景教と唐代との関係が歴史的に書かれていて、特に「三一」という三位一体の漢字表記やシリア語表記が数多くあることにも驚きでした。
その拓本は、会員のキリスト者が中国西安に旅行した際、購入して東海聖句書道会の初代会長であった保田井善吉(蘇水)先生(当時、調布バプテスト教会牧師)にプレゼントし展示されたものでした。私も聖句書道会設立の発起人で、事務局長を最初の5年間務めさせていただいたこともあり、会長と相談して拓本をコピーし、聖句書の手本にしたいと話すと快諾され、話が進んでいきました。名古屋の製本会社に持ち込み、社長から製本について学び、出来たのが2000年6月30日発行のひもとじ300冊限定自費出版のものでした。題は『シルクロードを東に向かったキリスト教 景教』です。
この本は、地元の新聞社の役員でキリスト者の方から掲載できるとのお話を受け、原稿を投稿して紙上掲載されたことからすぐに品切れとなり、関心の高さを体験しました。
新聞購読者からは、購入したいとの電話が毎日殺到し、郵送に多忙でありました。中にはエホバの証人の方からも購入の電話を受け、購入理由を聞くと、古代のキリスト教徒の神観は三位一体かエホバ神の一神教かを尋ねるものでした。私が当然三一ですよと答えると、驚いていたことを忘れません。また県内外から、特に仏教の幾人かの僧侶様からの購入依頼にも驚きでした。
私が景教について学ぶことができたのは、保田井先生からでした。先生は漢文や東洋史にも造詣が深く、またキリシタン研究会を京都で開催していたこともあり、さまざまなことを教えていただきました。ご高齢となられ、足腰の弱くなられた先生宅にたびたび伺い、景教について学ぶ機会を得、私が中国の景教ツアーから帰宅して写真などをお見せすると、先生は「私も中国景教旅行に行きたかった」と惜しまれる言葉を何度も語られたことが思い出されます。
※ 参考文献
『景教—東回りの古代キリスト教・景教とその波及—』(改訂新装版、イーグレープ、2014年)
旧版『景教のたどった道―東周りのキリスト教』
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