国際社会における台湾の孤立や、少数民族の問題などを話し合う「台湾エキュメニカル・フォーラム」(TEF)の初めての会議が11月28〜30日、同国北部・新竹(しんちく)にある新竹聖書学院で開催された。TEFは「今日の台湾における教会の宣教」をテーマに昨年2月に台湾で開かれた国際会議の勧告を受けて、今年初めに組織された。会議は台湾基督長老教会(PCT)が主催し、日本や韓国、香港、フィリピンなど、アジア太平洋の諸国・地域だけでなく、欧米諸国からも参加者があり、約140人が台湾に関わる諸問題について話し合い、中国の台頭に伴い、国際的にますます厳しい状況にある台湾への支援を世界の教会に求めた。
TEFによると、台湾に対する中国の圧力は、2016年に蔡英文(さい・えいぶん)総統が就任して以来、急激に高まっている。PCT顧問で、PCTのTEFタスクフォース責任者である徐望志(ビクター・ス)博士は会議2日目の29日、台湾の国際的な状況について講演し、台湾を「国際的な孤児」と表現した。オーストラリアでは、シドニーのレストランで働いていた台湾人女性2人が、「中国人」ではなく「台湾人」と主張したことで、中国人オーナーから即刻解雇された。またスイスでは、「中華民国」(台湾)のパスポートを所持していた観光客がジュネーブの国連事務所を訪れたが入場を拒否され、「中華人民共和国」(中国)のパスポートを持ってくるよう言われたという。
徐博士によると、国連関係の施設が、台湾のパスポート所持者の入場を拒否することは珍しいことではない。ニューヨークの国連本部でも、台湾のパスポート所持者は、単に台湾が国連加盟国ではないことを理由に入場を拒否される。台湾は国連だけでなく、世界保健機関(WHO)や国際民間航空機関(ICAO)など、国連の専門機関にも加入できていない。また最近では、国連機関ではない国際刑事警察機構(インターポール、ICPO)でも、中国の妨害により加盟を拒否されている。
徐博士は、台湾が中国による脅威と「いじめ作戦」に直面していると言い、台湾の主権と国家としての威厳は「侵されることなく保護されるべき」と訴えた。また、会議の参加者と世界の諸教会に対し、国際社会に参画したいと願う台湾人の訴えを知り、広げてほしいと求めた。
会議の前日27日には、プレ・ユース会議が開催され、アジア太平洋、欧州諸国から約40人の青年が参加した。青年らは世界の諸教会やエキュメニカル組織に対し、台湾を独立した国家として認めることや、台湾に関する諸問題に焦点を当てたプログラムや宣教の機会を増やすなどし、台湾人の苦しみに寄り添ってほしいと求めた。また発表した「エキュメニカル・ユース宣言」では先住民の問題にも言及。すべての国において、先住民とその生活様式に対する現在の見方を変えるための教育の促進を求めた。
最終日30日午前に行われた帝国主義に関するセッションでは、中国のヘゲモニー(主導的地位)の問題が深く論じられた。主題講演の後には「東アジアの視点」として、台湾、韓国、日本、フィリピンの各国の代表者が応答した。日本からは、日本基督教団からPCTに派遣されている高井ヘラー由紀宣教師がコメンテーターを務めた。
午後の「台湾と世界における正義と平和のための連帯として、エキュメニズムを広げる」と題したセッションでは、輔仁(ほじん)カトリック大学教授のジジモン・アラッカラム・ジョセフ神父(神言会)と、PCT前議長の舒度大逹(スド・タダ)牧師が発題した。
ジョセフ神父は、世界の正義と平和に対し、エキュメニカル運動が多くの貢献をしてきたのにもかかわらず、「われわれは時に、正義と平和は単なる蜃気楼(しんきろう)や夢にすぎないという、世界の多くの人々が経験してきた事実に圧倒されてしまう」と述べ、厳しい現実に視点を当てた。その上で「もし教会が、世界の正義と平和のための道具となることを望むのであれば、教会は自らの間の相互協力と連帯を示さなければならない。教会が分裂し、その中に平和がないのであれば、教会は平和のための道具にも、平和をもたらす通路にも絶対になり得ない」と語った。
一方、自身も台湾原住民「タロコ族」である舒度牧師は、「母なる大地」といった先住民が持つ世界観に学ぶことが、世界に正義と平和をもたらすことの手助けになると語った。