ハワイで会社を経営しながら、8人の子どもをホームスクーリングで育てる「ビジネス牧師」の中林義朗氏が9月21日、「幸せになる7つの習慣」をテーマに東京都内で講演し、聖書の教える幸せな人生の秘訣を語った。
中林氏は1963年、静岡県御殿場市生まれ。関東学院六浦高校を卒業後、米ロサンゼルスに留学し、日系商社に入社した。ハワイの支店長を経て、30歳で中国支社長に就任すると、改革開放政策に後押しされて会社は急成長し、千人の社員を雇用するまでになった。運転手、通訳、秘書が常に身の回りの世話をし、家事手伝いもいる何不自由ない生活を送っていた。
そんなある日、ハワイ出身の妻の実家から10万坪の土地を再開発する事業を助けてほしいと依頼を受けた。悩みに悩んだ末に会社を辞め、ハワイに戻り、事業経営に取り掛かることになった。しかし、約束の資金がいつまで待っても動かず、収入が皆無のまま、3年半が過ぎてしまった。仕事を探すこともできず、蓄えていたお金も投資で使い果たし、一寸先も見えない地獄のような生活を余儀なくされた。
それまで「人生は自分の努力で切り開くもの」と信じ、家庭を犠牲にして全力で仕事に打ち込んできた中林氏。「何のためにハワイへ帰ってきたのだろう」と葛藤の毎日だったという。そんな中林氏を変えたのは、クリスチャンであった妻の祈りだった。
「妻は何も言わず、ずっと祈ってくれていました。ある時、彼女の涙と鼻水でごわごわになった聖書を見つけたとき、私はひざまずいて崩れました。裕福ながらも不安の多かった中国での暮らしにおいても、ハワイでの地獄のようなどん底の生活の中でも、常に私の心に愛を注いでくれたのは妻でした。その愛は、実は彼女から出たものではなく、彼女の両親から継承された父なる神の無条件の愛であったことに気付かされたのです」
中林氏は、牧師であった妻の父からハワイで洗礼を受けた。努力し自分の行い(doing)で何かを達成しなければと追い立てられる生き方から解放され、主につながる存在(being)に安らぐ自由を得たとき、それまで重くのしかかっていた多くの不安が吹き飛んだ。
「妻がいなかったら、終わることのない欲望との戦いの毎日に今も苦しんでいたでしょう。私と同じように、多くのビジネスマンが今も苦しんでいます。自分が何のために仕事をしているのか、自分が本当はどこに向かっているのかさえ分からない。私は教会に行って、その大切なことに気付きました。だからまずは自分が実践して、それを伝える牧師になりたいと思うようになりました」
「ビジネス牧師」という肩書だが、教会からの牧師給はゼロ。自ら会社を経営してビジネスの第一線に立ちながら、一緒に汗を流す。社会の前線で働きながら、かつての自分のように苦しむ人たちに届く福音をどうしても伝えたいからだ。現在手掛けるビジネスは順調で、収入の90パーセントを献金し、残りの10パーセントで豊かに暮らす経営者への道を着実に進んでいる。成功の秘訣は「バランスの取れた優先順位を追い求めること」。毎朝6時に教会で1時間祈る習慣を持つようになってからは、教会でも会社でも、お金に困ったことは一度もないのだという。
講演で中林氏が話した「幸せになる7つの習慣」の要旨は次の通り。
1)楽しい事をする
世界で成功を収めている人は皆、自分のやっていることを楽しんでいる。一度しかない人生、好きなことをしよう。好きなこととは、自分にタレント(才能)が与えられて得意なこと。何歳になっても遅いことはない。神様から与えられたタレントをもう一度見直してみませんか。当たり前のようで難しいことのように思えるが、できること。親の仕事は、子どものタレントを見極めて、それを磨いてあげること。
2)笑顔
人間は笑うときに、顔の17の筋肉を使って笑う。ところが、怒るときには顔の43の筋肉を使ってしまう。怒るとしわが増える。にこにこ笑いながら生きていこう。
3)朝早く起きる
朝、静まる時間が必要。問題を抱えているなら、まずは朝早く起きて1時間、聖書を開いて祈る時間を持とう。
4)常に「なぜ」を考えて生きる
神様が皆さんを祝福するのはたやすい。でも、自分の欲のために富をため込む人に、神様は富を預けるだろうか。世のため、人のために富を与えようとする人を、神様は豊かに祝福してくださる。
5)他人と比べない
生まれつき手足がないニック・ブイチチさんのあの笑顔にあの自信。そのままで皆さんは完璧なものとして神様につくられた。他人と比べる必要はない。自分に自信を持とう。
6)人から好かれようとしない
ショッキングな事実がある。皆さんのことを知っている人が世界に100人いるとして、そのうち30人は皆さんのことが大嫌い。次の30人は皆さんに興味がない。次の30人は皆さんのことがまあまあ。これで90人。残りの10人が、皆さんに興味があり、友達になりたいと思っている。
万人から好かれようなんて無理なこと。でも、自分のことが大嫌いだったり、興味がなかったりする60人を振り向かせようと努力して、自分のことに興味のある人々に背を向けている、外面だけがいい自分の姿はないだろうか。夫婦の関係が良くなくて、どうしてビジネスがうまくいくだろうか。どうして子育てがうまくいくだろうか。
愛する家族のために皆さんの時間を使ってほしい。そうすれば、皆さんのビジネスは絶対に成功する。その姿を見て初めて、皆さんのことを振り向きもしなかった人々が、皆さんに関心を持つようになる。それが伝道ではないか。
7)批判に無神経になる
批判をすべて真に受けていたらやっていけない。あまりにも度を超えた批判は聞き流そう。批判を聞くなら、皆さんのことを愛している家族からの批判によく耳を傾けよう。男性なら特に、妻の声を聞かなければならない。最後まで話を聞いてあげよう。うっとうしく思っても、自分のことを一番よく分かってくれているのが妻。そこに成功の秘訣がある。
この日は、師匠に当たるJTJ宣教神学校前国際部学長の中野雄一郎氏から講師として招かれた中林氏。ビジネス牧師として、今後も定期的に来日し、講演活動を続けていきたいという。新刊も年内に刊行予定だ。
中林氏は現在、ヘブンリー・ハーモニー宣教会(三橋恵理哉主任牧師)、International Japanese Christian Church(冬木友博主任牧師)に所属している。中林氏の講座は、ユーチューブのチャンネル「ビジネスと聖書一口講座 From ハワイ」で聞ける。