ローマ教皇フランシスコは21日、スイス・ジュネーブの世界教会協議会(WCC)を訪れ、WCCの創立70周年を記念する礼拝でメッセージを伝えた。歴代教皇のWCC訪問は、1969年のパウロ6世、84年のヨハネ・パウロ2世に次いで3人目。記念礼拝ではキリスト者の一致について語った。
教皇と報道関係者を乗せた航空機はローマのフィウミチーノ空港を同日朝に出発し、現地時間午前10時過ぎにジュネーブ空港に到着。機内で行われた取材で教皇は「これは一致に向けた旅であり、一致を願う旅です」と述べ、WCC訪問を「エキュメニカルな巡礼」だと語った。
WCCにはこれまで2人の教皇が訪問しているが、パウロ6世は国際労働機関(ILO)創立50年でジュネーブを訪問した際に立ち寄ったもので、ヨハネ・パウロ2世の訪問も、スイスの司牧訪問のスケジュールの中で組み込まれたものだった。
機内に同乗した仏カトリック紙「ラ・クロワ」のバチカン特派員は、ジュネーブには教皇が関心を寄せる問題を扱うさまざまな国連機関がある中、WCCの訪問を優先させたのは、教皇がエキュメニカルな取り組を重要視しているからだと話す。
教皇はジュネーブ空港でスイスのアラン・ベルセ大統領と短く会談した後、WCCの本部があるエキュメニカルセンターに向かい、同日午前に行われた記念礼拝で「共に歩み、共に祈り、共に働く」をテーマにメッセージを伝えた。
1948年にオランダの首都アムステルダムで創設されたWCCは、正教会から聖公会、メソジスト、バプテスト、ルーテル、改革派に至るまで、さまざまな教派の教会が加盟する。加盟教会の信徒数は5億5千万人に上り、世界最大のエキュメニカル組織となっている。カトリック教会はWCCの正式な加盟教会ではないが、第2バチカン公会議後、1960年代初頭から公式な交流が始まり、WCC信仰職制委員会には正式メンバーとして加わるなど、50年以上にわたって協力関係を結んでいる。
教皇は記念礼拝で「キリスト者であるわれわれにとって、共に歩むことは、自身の立場を強めるための策略ではなく、主に対する従順による行いであり、世界に向けた愛なのです」と強調。「聖霊の導きにより堅く立ち、われわれ全員が共に歩めるよう、御父に求めようではありませんか」と呼び掛けた。
「この世界的な協議会の記念の祝典に、私は個人として参加したいのです。とりわけ、カトリック教会のエキュメニズムの理想に対するコミットメントを再び強調するために、また(WCCの)加盟教会と、われわれのエキュメニカルなパートナーとの協力を促すために」
「われわれが『わが父よ』と呼ぶときはいつも、われわれが(神の)息子であり娘であることに共感を感じるだけでなく、われわれが兄弟姉妹であることに共鳴を感じます。祈りはエキュメニズムの酸素です」
WCCについては「エキュメニカル運動に仕えるために誕生したのであり、この運動それ自体は宣教へ対する強力な召しによって生まれたものです」と指摘。「と言いますのは、キリスト者が身内で分裂しているのであれば、どうして福音を伝えられるというのでしょうか」と述べ、教会の一致が宣教のために何よりも重要であることを強調した。
「宣教の使命というのは、ディアコニア(奉仕)や人類発展の促進以上のものであり、無視したり、骨抜きにしたりすることはできないものです。まさにわれわれのアイデンティティーを決めるものです」
教皇はまた、ガラテヤの信徒への手紙5章16節「わたしが言いたいのは、こういうことです。霊の導きによって歩みなさい。そうすれば、決して肉の欲望を満足させるようなことはありません」を引用。「本能だけに従うとき、われわれは歯止めのきかない消費主義の奴隷となり、神の声が次第に聞こえなくなってしまいます」と警告を鳴らした。
「子どもやお年寄りなど、自分の力だけでは歩めない人々は厄介者となり、脇に追いやられてしまいます。また被造物は、われわれの必要を満たす以外の目的を持たなくなってしまいます」
「エキュメニズムは、われわれをキリストの御心に従わせようとするものであり、聖霊の導きに従うとき前進することができます。またそれは、内だけに閉じこもっていることを拒み続けるのです」
午前の記念礼拝後には、ジュネーブ近郊ボセーのエキュメニカル研究所を訪問。「世界の多くの教会の将来の牧師や学術指導者の訓練において重要な役割を果たしている」として、同研究所を評価した。
午後には再びエキュメニカルセンターに戻り、WCCのオラフ・フィクセ・トヴェイト総幹事や、WCCの中央委員らと会談。夕方には、ジュネーブ空港に隣接するコンベンションセンター「パレクスポ」でミサを行った。ミサには約4万人が参加し、模様はスイス国内のテレビで生中継されるなどした。