世界145の聖書協会が加盟する「聖書協会世界連盟」(UBS)は1日、「世界聖書頒布報告書2017」(英語)を発表した。それによると昨年、世界の各聖書協会によって頒布された聖書(旧新約合本)は約3860万冊だった。インターネットを通して頒布される聖書が急増し、全体の2割に相当する約790万冊がネット経由で頒布された。
世界の聖書頒布数は緩やかな増加傾向にあり、昨年は前年の3430万冊から430万冊増加した。この3年間に世界で頒布された聖書は1億700万冊に及ぶ。一方、旧約・新約のみの聖書や福音書の分冊、学習用の聖書冊子などを含めた頒布数は3億5490万冊で、前年の4億140万冊と比べ約12パーセント減少した。UBSによると、UBS加盟の聖書協会によって翻訳・頒布されている聖書は、世界の聖書の約7割を占める。
昨年の特徴は、主に「YouVersion(ユーバージョン)」などの聖書アプリを通してダウンロード(DL)された聖書が急増したこと。特に欧州・中東地域では、昨年頒布された聖書のうち44パーセントがこうしたネット経由のものだった。言語別ではスペイン語が最も多く308万DL、次いでポルトガル語202万DL、英語117万DLだった。なお、DL数の統計は同一人物による重複したDLを省くなどしており、単純なDL数はさらに多い。オーディオ聖書など、ネット以外の非印刷聖書の頒布数は78万だった。
印刷された聖書が最も多く頒布されたのはブラジルで528万冊。ブラジルには世界で最も大きな聖書の印刷工場の1つがあり、前年も677万冊と世界で最も多くの印刷聖書が頒布された。この他、2位は中国で394万冊、3位は米国で242万冊、4位はインドで205万冊、5位はフィリピンで137万冊だった。昨年はこの上位5カ国で世界の印刷聖書頒布の4割以上を占めた。
一方、今年3月発行の「2017年度日本聖書協会(JBS)年報」によると、JBSが昨年度(16年11月〜17年10月)に頒布した聖書は約9万2千冊だった。訳別では、新共同訳が全体の9割弱を占め約8万2300冊、口語訳が約5500冊、文語訳が約1100冊だった。外国語聖書も約3300冊頒布された。旧約・新約のみの聖書や分冊、点字聖書、録音聖書、選集などを含めた頒布数は約47万9千冊だった。
紛争地域でも積極的な聖書頒布が行われた。国連の統計によると、紛争などで住居を追われた難民や国難避難民などは世界に6560万人いる。400万人が難民・国難避難民となった南スーダンでは、2013年の内戦勃発以来、25万冊の聖書が配られた。内戦勃発前の平均的な頒布数は年6千冊程度で、劇的に増加した。
14年にクリミア危機を経験したウクライナでは、聖書や関連冊子19万冊以上が、難民や軍人、病院収容者など、特に紛争の影響を受けた人々に配られた。このうち約半数は、軍人用に防水加工したり、希望に関するメッセージ部分を強調表示したりした特別版の新約聖書だった。
シリア、レバノン、ヨルダン、イラクでは2011年以降、混乱が続く中、聖書35万冊を含む200万冊の聖書関連冊子が頒布された。特に人口の半数が難民・国内避難民となっているシリアでは昨年、20万冊が頒布された。シリア聖書協会のジョージ・アンドレアさんによると、激戦地だった同国北部アレッポでは戦闘が行われていた7年間もほぼ毎日書店を開店した。また昨年のクリスマスには、これまでにない規模の頒布キャンペーンを行ったという。
昨年11月にクーデーターで大統領が失脚したアフリカ南部のジンバブエでは、聖書の頒布数が前年と比べて7割以上増加した。これは、ジンバブエ聖書協会が地元の教会との協力を強化したことで実現できたという。
識字教育のためにも聖書教材が用いられている。エジプトでは、聖書関連冊子やリーフレットなど130万冊が、初等言語学習者のために配られた。各聖書協会による識字教育プログラムは世界に30余りあり、毎年10万人以上の人々が聖書を使って言語を学習しているという。
この他、昨年は宗教改革500周年であったことから、さまざまな記念企画が世界各地で行われた。ドイツではルター訳聖書の新版を出版。ブラジルでは特別版の聖書17万5千冊を頒布し、南アフリカでは宗教改革に関する冊子15万冊を配った。その他、記念切手の発行(ポルトガル)や聖書国際会議の開催(アルゼンチン)、ルター訳スタディバイブルの出版(トルコ)など、さまざまな形で宗教改革が祝われた。