キリスト教迫害監視団体「米国オープン・ドアーズ」は10日、キリスト教徒に対する迫害がひどい上位50カ国をまとめた「ワールド・ウォッチ・リスト2018」(英語)を発表した。このリストは毎年作成されているもので、「迫害指数」によって各国の状況が評価されている。襲撃事件などの「暴力」行為だけでなく、個人生活や家庭生活における制約、礼拝や改宗の自由、職場や地域社会での嫌がらせなど、キリスト教信仰を持つことでかかる「圧力」も評価に反映されている。
今回、最も迫害がひどい国とされたのは北朝鮮で、17年連続でワースト1位となった。北朝鮮の迫害指数(最高100)は94で、2位のアフガニスタンもほぼ同じ93で続いた。迫害指数81以上の国は「極度」の迫害に直面している国とされ、11カ国が指定された。11カ国のうち8カ国はイスラム教国で、アフリカ、中東の国が多く、ヒンズー過激派による弾圧が激しいインド(迫害指数81)も11位となった。一方、共産党政権により、教会の取り壊しなどが伝えられている中国は43位(同57)だった。
カトリック系ニュースサイト「クラックス」(英語)によると、米国オープン・ドアーズのデイビッド・カリー会長兼最高責任者(CEO)は同日、米ワシントンで記者会見を開いた。カリー氏は、最近の迫害の特徴として3つを挙げた。1つは、過激派組織「イスラム国」(IS)や北朝鮮政府のような「凶暴な組織」による迫害。もう1つはイスラム過激派による迫害で、そして、強姦(ごうかん)や強制結婚という形を取った迫害だという。
一方、米国オープン・ドアーズは、エジプト(17位、迫害指数65)とトルコ(31位、同62)の両国で昨年、「未曽有のレベルで迫害と抑圧」が急増したと報告している。特に、教会に対する爆弾テロが相次いだエジプトでは昨年、200人余りが迫害のために家を失い、128人が殺害されたという。
首都カイロにある福音派教会の指導者であるマイケル・ジョーンズさん(仮名)は、昨年はエジプト人キリスト教徒に対する犯罪件数が非常に多い年だったと、英国クリスチャントゥデイに語った。
エジプトでは昨年、49人が亡くなった教会爆破事件のほか、修道院に向かうバスが襲われ29人が死亡するなど、キリスト教徒を狙った襲撃事件が相次いだ。しかし、ジョーンズさんによると、これらの暴力の根底には、キリスト教徒に対する日常的な差別があるという。
政界では、キリスト教徒の政治家が重要なポストから締め出されており、学校では教師が、キリスト教徒の生徒をあからさまに無視したり、隔離したりしているという。都市部から離れた村落でより差別が顕著で、多くの村では地元のイマム(イスラム教指導者)が真理と権威の唯一の象徴と見なされているという。
「子どもたちは地元の学校に通い、大人たちは地元の病院に行ったり、地元のお店で食べ物を買ったりしなければなりません。しかし、そういった場所のすべてに熱狂的なイスラム教徒の力が及んでいるのです」
ネパールやインドなどの地域でも迫害が急増した。両国では「宗教的国粋主義が高まり、ヒンズー至上主義者の影響力の増大が影響している」という。
インドでは昨年、2万3793人のキリスト教徒が身体的または精神的に虐待された。これは、インドを除いた他のすべての国で虐待を受けたキリスト教徒の数よりも多い。米国オープン・ドアーズは、インド政府が「キリスト教徒を迫害する者たちから目を背けている」と非難している。
この他、米国オープン・ドアーズは、東南アジアが「次の新たな迫害の温床」になる可能性があると指摘する。マレーシア、モルディブ、フィリピンでは、イスラム過激派が迫害の増加を後押ししている。また、中央アジアでは政府から認められていない宗教団体が「弾圧」に直面しており、キリスト教徒が「警察当局による厳しい罰則や残忍な脅迫」の対象となっている。