米国のバラク・オバマ大統領は16日、フランク・R・ウルフ国際宗教自由法案に署名した。これは米国の外交政策の一環として、世界中の宗教的少数派への迫害に対抗する米国の取り組みをさらに強化するものである。
「宗教的に少数派に属しているか多数派に属しているかにかかわらず、人々が宗教的信念に基づいて思考し、信じ、行動できるよう、世界のリーダーとして米国はあらゆる機会を通じて自由と基本的人権を擁護します」と、同法案の共同発起人である共和党のジェームズ・ランクフォード下院議員(オクラホマ州)は声明で述べた。
下院から提出されたこの第1150法案は、最近引退したフランク・R・ウルフ前下院議員にちなんで命名された。ウルフ氏は、世界中で迫害を受けているキリスト教徒やその他の宗教的少数派に対する熱心な支持者だ。1981年、バージニア州第10下院選挙区で当選して以来、下院議員を務め、昨年引退。敬虔な長老派信者として知られている。
同法案は、ビル・クリントン元大統領が98年に署名した国際宗教自由法(IRFA)を改正したも。同法により、米国務省内には、世界における宗教的自由の侵害に取り組むため、専属の事務所が設置された。
宗教の自由を最優先に取り組むため、今回の改正案には、米連邦政府内の関連部署を強化する規定が盛り込まれている。この法案により、国際宗教自由担当特使は下級職員ではなくなり、国務長官に直接報告できる立場になる。
また、米南部バプテスト連盟倫理宗教自由委員会のマシュー・ホーキンス氏が指摘したように、宗教の自由に関する諸問題が「政権の気まぐれや無関心によって政治的に不問に伏されることがない」よう、最少人数の職員が事務所で勤務することを保証している。現時点では、「国際的な宗教的自由という戦略的価値」に関する訓練は任意だが、将来的には海外勤務の全ての職員に対して義務となる。
また同法案は、宗教的迫害の度合いやタイプを、これまでよりも詳細に分類する。
カトリック系のCNA通信によると、この新しい法案は、政府そのものが、特定の宗教団体を迫害したり、故意に迫害を許容したりしている「特定懸念国」と、宗教の自由が保護されている「対応国」という二極的な区分だけでなく、さらに詳細な区分を設けている。宗教的自由の尊重に対して悪い実績を持つ国に対する「特別監視リスト」が追加され、不当に投獄された人々のために「包括的な宗教的囚人リスト」を作成し、維持することが政府に求められている。
この法案を最初に提出した共同発起人は、共和党のクリス・スミス下院議員(ニュージャージー州)と、中東宗教的少数派議員連盟の共同議長を務める民主党のアンナ・エシュー下院議員(カリフォルニア州)であった。
当時、この法案は、カトリック、ユダヤ教、イスラム教の指導者らに加え、共和党と民主党によって支持された。
キリスト教人道団体「ワールドヘルプ」の創設者であり会長を務めるバーノン・ブリューワー博士は最近、声明で「今日ほどキリスト教徒に対する迫害が多い時代は、歴史上にはありません」と強調。「過去19世紀の間で殉教したキリスト教徒の人数よりも、ここ1世紀の間に殉教した人数のほうが多いという見解もあります。中東、アフリカ、アジアにおいて、迫害が増えているようです」 と述べている。