迫害監視団体「国際キリスト教コンサーン」(ICC)は、キリスト教徒に対する迫害状況をまとめた報告書「ホール・オブ・シェイム(恥の殿堂)」(2016年版、英語)を発表し、米国、ロシア、メキシコの3カ国を、迫害が増加傾向にある「注目すべき新たな国」としてリストに入れた。
ICCのジェフ・キング会長は、「今年、宗教的差別や迫害が異常かつ懸念すべき域に達していると思われる3カ国を明らかにすることは、非常に重要であると私たちは感じました。その国々とは、メキシコ、ロシア、そして悲しいことに米国です」と語った。
「米国の迫害状況と、リストにある他の国々とを比較することはできませんが、(米国の場合)文化や裁判所が公的な場から信仰を意図的に追い出そうとしているように思える側面があります。物事の道理を明らかに見失い、誤った判決を下している判例があまりにも多い状況です」
ICCの報告書は、迫害状況が厳しい12カ国を3つのカテゴリーに分類している。ナイジェリア、イラク、シリアは、キリスト教徒にとって「最悪中の最悪の国」に挙げられており、イスラム教過激派の台頭やこれらの国々で進行中のテロが主な原因となっている。
北朝鮮も同じカテゴリーに含まれており、政府による弾圧や処刑、4万人から7万人に上るキリスト教徒の大量拘禁が迫害の原動力となっている。
インド、中国、パキスタン、サウジアラビア、エジプトは、キリスト教徒が頻繁に冒とく法の標的とされる迫害の「中心的な国」として挙げられている。これらの国々では、キリスト教徒は政府または宗教的多数派に対する脅威と見なされ、信者の増加が抑制されている。
最後に、米国、ロシア、メキシコは、キリスト教徒への迫害が増加傾向にある「注目すべき新たな国」とされている。
米国がリストに入ったのは、イスラム教過激派の支持者らが過去1年間に多くの単独テロを実行したためだが、キリスト教徒が文化やメディアの標的にされているきらいもある。
「米国のキリスト教徒はメディアから絶え間なく攻撃されており、頑固者、人種差別主義者、性差別主義者、心の狭い人間として描写されています」と、報告書は伝えている。また、伝統婚支持者とLGBT支持者の間での争いが、一部強調されている。
キリスト教徒は、差別に対抗するための法的闘争でも敗れており、伝統婚の原則を支持したために罰金を科されている、とICCは指摘している。
「数十年間にわたって蓄積された陳腐な司法判決や判例によって、(信教の自由を認めている)米国憲法修正第1条が歪曲され、裁判所は憲法草案者を無視して宗教を公的な場から追い出し、個人表現の偏狭な空間に閉じ込めています」と、報告書は述べている。
「本質的に裁判所は、宗教的自由や宗教表現を謳歌(おうか)できるのは、教会や自宅の中だけだと判断しています。人々は公共の場において、宗教的見解や宗教思想を表に出さないよう自制しなければなりません」
米国がリストに入ったからといって、米国人キリスト教徒の生活と、海外の信者が直面している暴力のレベルは比べものにはならないが、キング氏が所感を述べているように、米国における宗教的自由の衰退は懸念すべき状態だとICCは述べている。
北朝鮮は、キリスト教徒への迫害に関する調査では、他の団体による調査でも、最悪とされることがこれまでも多かった。米国オープン・ドアーズの報告書では、北朝鮮は過去10年近くにわたって最悪の国とされている。
ICCの報告書にある多くの国々は、カトリックの慈善団体「エイド・トゥー・ザ・チャーチ・イン・ニード(困窮している教会への支援)」(ACN)が昨年11月に作成した報告書(英語)にも、キリスト教徒が最も多く迫害に直面している国々として掲載されている。
ACNが「これ以上ひどくなり得ないほど」極度に迫害がひどい国としている7カ国は、アフガニスタン、イラク(北部)、ナイジェリア、北朝鮮、サウジアラビア、ソマリア、シリアである。
ACNはこの報告書で、「悪質で極端な形態のイスラム教が宗教的自由の脅威として台頭し、最悪の迫害の多くにおける主要な原因であることが明らかにされた」と述べている。