世界教会協議会(WCC)は10月27日〜31日、韓国の首都ソウルと中東部の安東(アンドン)市で、キリスト教と儒教の宗教間対話集会を開催した。世界宣教会(CWM、本部・シンガポール)と「韓国科学と命フォーラム」が協賛し、韓国キリスト教教会協議会(NCCK)や成均館(ソンギュングァン)大学、安東市、韓国文化倫理財団などが後援して開かれたもので、WCCによるキリスト教・儒教間の公式対話は今回が初めてだという。
WCC総幹事代行でエキュメニカル研究所所長のイオアン・サウカ神父は開会のあいさつで、「WCCは、キリスト教と儒教の宗教間対話に今回初めて直接関わっています。今日は、私たちが心を開いて互いを受け入れる最初の日です」と語った。一方、WCCの所属教会の中でも、特に東アジアの多くの教会はすでに日頃から儒教と対話を行っていると強調。「キリスト教徒が自己をどう理解し、他者とどう関わっていくか」という重要な課題に取り組む上で、今回の集会が果たす役割に期待を示した。
ローマ教皇庁諸宗教間対話評議会(PCID)議長のジャンルイ・トーラン枢機卿も、この歴史的な集会にあいさつを寄せた。「無関心と貪欲の文化が、相互依存や協力関係を壊すことによって、いかに人間関係をむしばんでいるか」と指摘したトーラン枢機卿は、「私たちの将来を形成するには、新しい対話だけでなく、新しい、普遍的な結束が必要なのです」と述べた。
また、「孔子もイエス・キリストも、そしてその信奉者たちも、人間の歴史に変化をもたらしてきたのですから、物事を変えていくことはできると私たちは確信しています。この世界に新しい希望をもたらすために、それぞれの霊的宝を再発見するのは私たち次第なのです」と語った。
WCCアジア議長の張裳(チャン・サン)牧師(韓国基督教長老会総会)は、朝鮮半島の和解に向けてさまざまな試みがなされている中で、今回のような対話が韓国で行われる重要性を指摘。「儒教とキリスト教間の対話は韓国内のキリスト教を理解するのには不可欠です。正義と平和という私たちの時代のテーマが、この2つの宗教間の対話と協議で取り上げられることは、意義深いことだと思っています」と述べた。
今回の集会は「神学的認識」と「体験」の両方が宗教間対話には不可欠だとして、さまざまなアプローチが行われたことに特徴がある。集会の中心的な役割を担ったWCC宗教間対話・協力担当責任者で牧師のペニエル・ラクマー博士と、韓国科学と命フォーラム会長で神学者の金洽榮(キム・フプヨン)博士は、対話に向けて画一的な取り組み方をしないように努めたと話す。対話は単に「会話を交わす」ことではなく、「実際に他者の視点に立って体験することが必要だ」というのが2人の一致した認識だ。
実際のプログラムとしては、10月27日から28日まではソウルで「神学上の対話」を行い、その後、韓国の儒学者・李滉(イ・ファン、1501〜70)の故郷で、韓国の儒教の中心地である安東市に移動し、29日から31日まで「実地体験の対話」を行った。参加者はそこで儒家一門の家を訪れ、実際に伝統的な儒教徒の生活を体験した。
ラクマーと金の両氏は「この体験は、もてなし合うという精神の中に、私たちの対話を再び植え付けることになるのです」と言う。
「両者がもてなす側と客になることで、対話の席において寛容で丁重であることの重要性を学べるのです。このようにもてなし合うことが、お互いに信頼と敬意の気持ちを作り上げる重要な一歩になると確信しています。互いにもてなし合うことによって築かれた固い基盤の上に立って対話を続けていくことで、実際に今日の世界に希望と癒やしを与えていくことになるのです」