「阪神淡路大震災」「オウム真理教・地下鉄サリン事件」と、私たちが結婚した年は波乱に満ちていました。「富士山の裾野にオウム真理教の教団施設がある」と知ったX教祖Y氏は、「神聖なる富士山を浄(きよ)めに行く」と、側近信者を伴い、大量の観音ペンダントと浄めグッズ(金&緑の観音カードセット、波動塩、御神酒、波動米)を手に、青木ヶ原樹海から富士山火口を巡りました。浄めグッズと一緒に、18金とプラチナの観音ペンダントを樹海の至る所に埋め、火口には次々と投げ入れました。
すると数日後、某新聞のカラーページに、「富士山火口に『虹』がかかっている写真」が大きく掲載されたのです。それを見たY氏は、「神様から浄められたというサインね。これから大きな『浄化』が始まる!」と言いました。
すると間もなくして(1995年5月16日)、ついに、オウム真理教施設「第6サティアン」(山梨県上九一色村)に警視庁が踏み込み、教祖・麻原彰晃こと松本智津夫死刑囚を逮捕したのです。それから徐々に、オウム真理教事件は終息へと向かっていきました。私は、「Y氏のお浄め効果だ」と感動しました。
また、「樹海でY氏が浄めた場所で祈る姿を撮影した写真に、『竜の形をした太い火柱』が写し出されました。Y氏は、「この写真からは、すごい波動が流れている。背骨の部分に敷いて寝ると健康になる!」と言い、大きく拡大したもの(1枚5千円) が販売され、私たちも購入し、敷いて寝ました。以前に、「観音カードを、布団の四隅と中央に貼って眠ると体が癒やされる」と言われ、すでにカードが貼り付けられていたところに、さらに大きな「竜とY氏のツーショット写真(約A3サイズ)」も貼り付けられた私たちの敷布団は、かなり異様だったと思います。
当時、「竜は神の使いで良いもの」だと信じていました。しかし、聖書で「竜」は、悪魔(サタン)だと記されています。「こうして、この巨大な竜、すなわち、悪魔とか、サタンとか呼ばれて、全世界を惑わす、あの古い蛇は投げ落とされた。彼は地上に投げ落とされ、彼の使いどもも彼とともに投げ落とされた」(黙示録12:9)。これを知ったときには、「私は毎晩『悪魔』と一緒に寝ていたのか!」と、ゾッとしました。他にも竜が付いたものを随分持っていましたが、見つけ次第処分していきました。ちなみに、「ブルース・リー」(燃えよ!ドラゴン)の大ファンでもありました(;゜∇゜)。
そのように、間違った信仰を深めていくうち、私たちの夫婦関係に少しずつ「闇」が立ち込め始めました。ある日、2人で出掛ける支度をしていたときでした。夫Aに「ベルトを知らないか?」と聞かれ、自分の支度で忙しかった私は、「その辺にあるんじゃない?」と軽く答えました。それでも見付けられず再び聞いて来たAに同じ返事を繰り返すと、突然「どこにあるんだよ!!!」と、ものすごい剣幕(けんまく)で怒鳴りつけられたのです。
私は恐怖ですくみ上がりました。イライラしていたとしても、あまりに異常な怒り方に、まるで落雷に遭ったようでした。私は、男性の良く通る大きな怒鳴り声にトラウマがあるのか、子どもの頃、似た状況で父に大声で怒鳴られた記憶がフラッシュバックし、体がガタガタと震え、心臓がドキドキして、それから怖くて逆らえなくなってしまいました。
その事がきっかけとなって、「この人は、何で怒るか分からない怖い人」という「恐れ」の感情が生まれ、少しずつ「支配する者・される者」といった「主従関係」のような構図が築かれていったのです。
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