エルサレムの教会指導者らが、何世紀にもわたって合意されてきた聖地の「ステイタス・クオ(現状維持)」の原則が侵害されていると強く訴える共同声明(英語)を、5日までに発表した。声明は、「聖なる都、エルサレムと聖地の健全性を損ない、キリスト教徒の存在を弱めようとする組織的な企てがあります」と主張している。
「今、私たちはもう一度団結して、ステイタス・クオに対する最近のさらなる侵害を非難しています。このような問題において、教会の指導者たちは一致団結して、何世紀にもわたって私たちの生活を秩序付けていたそれらの法、合意、規則を台無しにする、いかなる機関や集団によるあらゆる行為に断固として反対します」
教会指導者らは声明で、この数カ月の間に浮上した2つの問題に言及した。1つ目は、エルサレム旧市街にある歴史的建造物「ヤッファ門(ジャッファ門)」に隣接する3つの重要な建造物群の購入が違法に行われたとする、エルサレム地方裁の8月の判決だ。
イスラエルの英字日刊紙「エルサレム・ポスト」(英語)が、ヘブライ語日刊紙「マアリブ」の報道として伝えたところによると、この判決により、建造物群の所有が、エルサレム総主教庁から右翼系NGO団体の「アテレト・コハニム」に移ったという。教会指導者らは、判決が「不当」なものだと主張している。
2つ目の問題は、西エルサレムにある教会所有地の国有化を求める法案に関するものだ。法案は、レイチェル・アザリア議員(クラヌ党)が提出し、超党派の国会議員39人が署名している。
教会側は主に1950年代に、西エルサレムにある土地をユダヤ国民基金に貸し出し、その一部は住民に売られた。貸出期間は今後20~50年で終了するが、教会側が民間起業家に、住民に影響を及ぼし、将来に不安定を生み出すような取り決めで土地の一部を売却したと伝えられたことから、土地の国有化により住民が被る可能性のある被害を補償する内容の法案が提出された。
しかし、教会指導者らは、法案は政治的な動機によるものだとし、所有財産に対する教会の権利を制限すると主張。さらに、ステイタス・クオにより保証された権利を侵害するものだとしている。
「私たちは、ステイタス・クオに対するこの最近の組織的な攻撃が、エルサレムの健全性、聖地のキリスト教社会の幸福、および私たちの社会の安定性に及ぼしている実に深刻な状況を、十分強調することができません」。教会指導者らはこのように訴え、問題解決のために世界の指導者が介入することを求めた。
一方、法案を提出したアザリア氏は、エルサレム・ポスト紙に対して、法案がステイタス・クオを侵害するものではなく、現地のキリスト教徒の存在を弱めるようないかなる意図もないと否定した。
「私が提案した法案は、ただ1つの目的を持っています。エルサレムの住民を守ることです。教会から土地を買った裕福な起業家の集団がいます。そしてエルサレムの何千人もの住民が、不正なく家を購入したのにホームレスになる可能性があるのです」
声明には、エルサレム総主教庁(正教会)のエルサレム総主教セオフィロス3世、アルメニア使徒教会のエルサレム総主教ヌールハン・マヌーギアン、カトリック教会ラテン典礼エルサレム総大司教座使徒座管理区長のピエルバッティスタ・ピッツァバッラ大司教ら、13人が署名している。