フランスとイスラエルの考古学者らが、8月からエルサレム郊外で「契約の箱」の発掘調査を行う計画を立てている。契約の箱の中には、神がモーセに授けた十戒が刻まれた石板が納められていると考えられている。
オンライン新聞「タイムズ・オブ・イスラエル」(英語)などによると、考古学者らはエルサレム郊外のキルヤト・エアリムにある古代遺跡で発掘調査を行う計画。この遺跡は、周辺地域ではまだ調査が行われていない場所の1つだという。
テルアビブ大学(イスラエル)のイスラエル・フィンケルスタイン教授は同紙に、「この場所は幾つかの理由で重要です。ここは、エルサレムの丘々の中で今まで調査されてこなかった大きく、重要な遺跡です。ユダ王国のあった地域で組織的な考古学的発掘がなされてこなかった唯一の主要な遺跡といえるでしょう」と話している。
キルヤト・エアリムは聖書で何度も言及されており、鉄器時代だったと考えられている士師たちとダビデ王の時代に、エルサレムの近くにあったユダ族の町として記述されている。
発掘調査は、エルサレムから西に約10キロの町アブゴーシュの北西端に位置する「契約の箱聖母マリア教会」の周辺を中心に行われる。この場所の多くは、これまで発掘が行われたことはなく、当時のままの状態が保たれていると考えられている。
同紙は、キルヤト・エアリムについて次のように伝えている。
「キルヤト・エアリムに関心が集まる1つの点として、その場所に古代の神殿があった可能性がある。神殿の遺跡が埋もれている可能性があり、何らかの発見があれば、研究者らが鉄器時代のユダの宗教的実践をより良く理解する助けとなる。
聖書に記されている物語の幾つかの箇所で、キルヤト・エアリムは宗教的礼拝の場所として言及されている。ヨシュア記では、キルヤト・バアル、バアラ、バアレ・ユダといったさまざまな名称で言及されており、ある時はその場所が、カナン人があがめていた神々の1つ、嵐の神であるバアルに対する崇拝と関わりがあったことがほのめかされている」
サムエル記(上7章1、2節、下6章)に記されているように、ダビデ王がエルサレムに運ぶ前まで、契約の箱はキルヤト・エアリムに保管され、祭司エルアザルによって管理されていた。
聖書における契約の箱についての直接的な記述は、ヨシヤ王(紀元前609年没)時代について書かれている歴代誌上13章3〜5節が最後となっており、次のように書かれている。
「わたしたちの神の箱をここに移そうではないか。サウルの時代にわたしたちはこれをおろそかにした。」民のだれにもそれは当(とう)を得たことだと思われたので、すべての会衆が賛同した。ダビデはエジプトのシホルからレボ・ハマトまでのすべてのイスラエル人を集め、神の箱をキルヤト・エアリムから運んで来ようとした。
フィンケルスタイン教授は、契約の箱がそこに隠されているのであれ、そうでないのであれ、キルヤト・エアリムは非常に重要な町であったと仮定することは合理的であると話している。「聖書の物語に従うと、彼らが契約の箱を運んだ場所は、もちろん、ただの畑、あるいは1本の木の下ではありませんでした。それは重要な礼拝の場所でした」