カリエの朝は早い。ラヴラ修道院から6時のバスに乗り、7時すぎにはカリエに着く。街の一番外れ、クトゥルムシウー修道院へ行く道の途中、坂の中ほど、石畳の小径、パンの香りに誘われるのである。早朝よりこのパン屋は営業しており、数種類のパンが焼かれ置かれている。ケリに住む修道士や腹を空かせた巡礼者たちで、行列ができるほどである。
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街の方へ少し戻ると、薄暗い建物、居るのか居ないのか分からないカーテンがすべてかかった扉に「HOSPITAL」と書かれてある。2016年9月に4度目のアトスへ訪れた。その時、滞在初日から腰痛に悩まされていた。痛みは日を追うごとに増し、起き上がるのもやっと。リュックサックなど到底背負えないほどであった。
カリエにいた私は、思い切ってその扉を開けた。すると、筋肉隆々のTシャツ1枚のひげを生やした男が、驚くほど丁寧に対応してくれたのだ。腰をひねったり押したり触診し、血液検査も実施してくれた。このアトスでこんな設備が整っているのかと驚きであったが、数分で検査結果も出て、内臓的には問題ないことが判明し、お尻に大きな注射、すなわち痛み止めを刺されたのだ。
手際は大変良く、私の腰痛も徐々に引くのが分かり、私は彼をその後名医と呼んでいた。その後の取材も無事に敢行でき、アトスでも医療はそれなりに整っているということが、身をもって実感できた。
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街の中心部には薬局も1軒あり、こちらで痛み止めの薬を買った。こちらの店員も優しく、親身になって痛いのか、かゆいのかなどをちゃんと質問し、飲み方なども丁寧に教えてくれた(1錠はかなり大きい)。
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薬屋の両隣には、商店が並ぶ。ここでは、野菜、魚、何でもそろう。驚きなのが、肉やビール、酒、チーズにハム、ベーコンまで何でもそろうのである。日用品もトイレットペーパーや下着、靴にバッグ、忘れ物をしても何でも購入できる。地図にポテトチップス、チョコレートにアイスなんかも置いてあるのに驚きである。
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その前には、レストラン、ミニバスの事務所、土産屋が並ぶ。レストランは修道院で食事が出ない日や、早朝からバスを待つ間に使うと便利である。コーヒーやワイン、スパナコピタという、ほうれん草を挟んだパイ、グリークサラダ、タラモサラダ、ひよこ豆のスープが日によって準備されている。スパゲッティミートソース、魚介のピラフ、コトプロという鶏肉料理も準備されていることもある。
ここでは、巡礼者たちも多く集まり、巡礼に疲れた体を癒やす場、また情報交換の場ともなる。
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どこからともなく猫も集まり、おこぼれをもらいに来るのである。このようなレストランはもう1軒あり、そちらはWi-Fiも完備してあり、その時によって使い分けている。
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土産屋は合計3店舗あり、それぞれイコンやろうそくなど、聖堂などで扱うもの、十字架のペンダント、本や置物など、アトスならではのお土産が並ぶ。
政庁もあり、大臣が常駐し、延泊希望などの際は申請が必要となるため、謁見して直接許可を頂くことになる。その他、郵便局、銀行、警察署もある。
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このアトスへ来て、かなりの不自由を強いられることを予想していたが、この首都カリエがあるおかげで、すべての巡礼者たちにとっても生活用品や食事、何でもそろうため、巡礼を安心して送ることができるのである。また、ケリに住む修道士たちも多く利用し、日々の生活に役立っている。運営はほぼ労働者が手助けしており、そのような人々にとっても不自由のない街となっているのも確かである。
特に、午前8時ごろから12時すぎごろまでは、修道士や巡礼者たちで賑わう。今日アトスへ来た者、今日帰る者、各修道院へ行く者、それぞれが必ず立ち寄る場であり、拠点となる場である。
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このカリエがあることにより、アトス巡礼が何不自由なく安心してできるということも、この聖地アトスの特徴の1つといえる。
次回予告(6月24日配信予定)
7月1日より開催します中西裕人写真展「AGION OROS ATHOS」の展示内容、情報などをお伝えします。
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