2つの宣教団体による28年の働きを経て、クルド語による旧新約聖書の翻訳プロジェクトがついに完了した。
米コロラド州に拠点を置くビブリカと、英オックスフォードに拠点を置く英国教会伝道協会(CMS)は今月3日、記念式典で新たに翻訳された聖書を発売した。聖書本文は、ソーラニ語と呼ばれるクルド語の主要な方言の1つで書かれている。
CMSの世界宣教ディレクターであるポール・タクスター氏は19日、英国の「プレミア・クリスチャン・ラジオ」(英語)でクリスチャンポストのインタビューに応えた。
タクスター氏は、この新しい聖書を通してどれくらいの人たちに福音が伝わるかについて、複数の要因があることから「把握は難しい」とコメント。「ソーラニ語を話す人は約600万人いますが、当然ながらその方々にはさまざまな人間関係があります。血縁者の方々もいろいろな方言を話します」「ですから旧約聖書や新約聖書の物語が語り伝えられた場合、当然のこととして600万人を優に上回る人たちに伝わる可能性があります」と語った。
ソーラニ語訳聖書は、「これからの世代」のクルド人キリスト教徒に恩恵をもたらす「世代を超えた贈り物」になるとタクスター氏は言う。
「聖書があれば信仰の土台を固めることができます。文字として書かれた言葉があるからこそ可能な方法で、信仰の土台を強固にできるのです」「私が一緒にいた人たちは、生まれて初めて聖書を読んで生き生きとしていました」
ビブリカの世界市場・ブランド戦略副主任であるジョナサン・コール氏は、翻訳プロジェクトが長期化した要因は中東の政情不安にあったと明かした。
「湾岸戦争は中東に伝道と聖書翻訳の道を開きました。しかし、政情不安や暴力行為が続き、作業が遅れたのです」
「『イスラム国』(IS)のテロにより、状況は一層困難になりました。翻訳チームも、互いに離れた場所で作業していました。パラテキスト(聖書の翻訳・出版ソフト)が登場したおかげで、翻訳の完成が早まりました」
またコール氏は、ソーラニ語訳聖書に強い関心が向けられていると語った。イラク北部のクルド人自治区の中心都市アルビルで最近行われた書籍の見本市では、旧新約聖書が200冊、ハードカバーの新約聖書が60冊、ペーパーバックの新約聖書が50冊売れたという。
ビブリカのカール・モエラー会長は18日、ソーラニ語訳聖書が発売されたことは「歴史的な出来事」であり、「驚くべき功績」だと声明(英語)で語った。
「この聖書は、長年の祈りと翻訳チームの多大な犠牲の結実であり、主の忠実さの表れです」「主はクルド人自治区で驚くべきことを行っておられます。私たちの祈りは、この聖書がクルド人教会の祝福となることであり、クルド人信者の信仰が成長し、多くのクルド人をイエス・キリストとの関係に導くために用いられることです」
ビブリカによると、ソーラニ語訳聖書は印刷版だけでなく、人気聖書アプリ「ユーバージョン」や、バイブルゲイトウエイのウェブサイト(英語)でも読むことができる。
クルド語:トルコやイラク、イラン、シリアなどに住むクルド人が話している3〜4言語の総称。インド・ヨーロッパ語族イラン語派に属し、主要な方言として、ソーラニ語やクルマンチュ語、ザザ語などがある。表記はアラビア文字またはラテン文字が使用され、それぞれ文法などが違うことから相互の理解は困難だという。しかし、それぞれの言語を話す人はクルド語を話しているという自覚を持っているという。