世界42カ国で翻訳出版されている、ペンテコステ神学に基づいた注解付旧新約聖書『FIREBIBLE(ファイヤーバイブル)』が3日、日本で初めて出版された。それに先立ち、ペンテコステ諸派の牧師らを招いての出版記念大会が2日、京王プラザホテル(東京都新宿区)で行われた。
ファイヤーバイブルは、1980年代にブラジルに遣わされていた米宣教師ドナルド・スタンプスが、宣教地の人々に福音を「生きた証し、力」として伝えるためのスタディーバイブルの必要性を覚え、読者をしっかりとした聖書信仰に導くために書き上げた注解と関連記事が始まり。その原稿を見て示しを受けたアッセンブリーズ・オブ・ゴッド教団が、国際的な文書伝道に取り組んでいる「ライフ パブリッシャーズ インターナショナル」(本部:米国ミズーリ州)に出版を依頼、ドナルド宣教師の死後1991年に初版が刊行された。
当初「フルライフ スタディーバイブル」と名付けられていた本書は、ポルトガル語、ロシア語、スペイン語、中国語などに翻訳され、福音を拒み続けていた国々における宣教の最前線で大いに用いられてきた。中国で300万冊配布された際、それと気付かれないように「聖書」と題を印刷せず、炎の写真の表紙がつけられたことから、地下教会で「ファイヤーバイブル」と呼ばれるようになり、「聖霊」を表すこれ以上にないふさわしい名前であると、他国でもその呼び名で呼ぶことになったという。
日本での出版は、ライフ パブリッシャーズと新生宣教団(埼玉県比企郡)の協力関係の中で、日本語版ファイヤーバイブル翻訳・編集委員会が立ち上げられ、約8年の作業を経て完成に至った。
出版記念会では、ライフ パブリッシャーズの常任理事・ジェフリー・ドーヴ氏が来日してあいさつする予定であったが、飛行機の故障で到着時刻に間に合わず、代わりに同団体のプロジェクトディレクター、ウォーレン・フラッテリー氏が「ハレルヤ!」と元気よく登壇。日本語版ファイヤーバイブルの翻訳・編集プロジェクトを立ち上げた神と関係者への感謝の意を示し、いよいよ日本での出版を迎えたこの日を「日本中に祝福が訪れる大変喜ばしい日」として、参加者とともに大きな拍手を神にささげた。
また、ファイヤーバイブルについての説明も、ドーヴ氏に代わってフラッテリー氏が行った。数ある聖書注解書や注解付聖書の中でも、ファイヤーバイブルの特徴は、「聖霊の働きが強調」されている点にあるという。例えば、使徒の働きでは「聖霊のバプテスマを受けること」「正しい異言の話し方」など、聖霊の働きに焦点を当てた項目に力が注がれているのが分かる。
聖書理解を助ける注解が豊富で、歴史的・神学的観念から説明する77の関連記事が記されている本書は、聖書神学や組織神学など、聖書を学ぶさまざまな手法に対応している。フラッテリー氏は、「残念ながら、歴史神学や現代神学には、真理でないものが入ってきてしまっている。本書は、聖書神学と組織神学をよく理解することで、それらの間違いを明らかにしている」と、内容の確かさに太鼓判を押した。
「教会の伝道は聖書の上に置かれるべきで、聖書は最高の権威。本書が、ますますイエスの教会が伝道に励み、信徒の弟子訓練を行い、イエスだけが人類の救い主であることを人々に知らしめ、近い将来必ずこの地上に戻って来られることを宣べ伝える助けになるように願う」と述べた。
続いて、新生宣教団のチェアマンであるロアルド・リーダル氏が、ライフ パブリッシャーズと新生宣教団の関わりについて、これまで両団体が協力して取り組んできた世界各国での文書伝道の働きに触れながら説明した。
リバイバルが起きている国であっても、自分の聖書を手に入れることができず、一生をかけて聖書が与えられるようにと祈っているクリスチャンが多くいるという現状を報告したリーダル氏。簡単に誰もが聖書を手に入れることができる今の日本にあって、なぜ新たにファイヤーバイブルが必要であるのか、という問いを投げ掛け、「聖書には力があり、御言葉によって人が変えられる。まだイエスを知らない人が多い日本では、教会に伝道への情熱と御言葉が必要だと感じている」と語った。
リーダル氏は、「このファイヤーバイブルは、日本の教会への大きな祝福と感謝すべき。聖書の神・イエス・聖霊をもっと深く知ることができるように、多くの人々の祝福のために、全国的に用いられることを願っている」と話した。
日本アッセンブリーズ・オブ・ゴッド教団の内村保総務局長が、日本語版ファイヤーバイブル出版のために尽力した人々、支援者への感謝の祈りをささげ、日本ペンテコステ・ネットワークの細井眞代表が、献納と日本の祝福の祈りをささげた。参加者一同も立ち上がって、ステージ上に積み上げられた日本語版ファイヤーバイブルに手を差し向け、共に声を上げて祈りをささげた。
翻訳・編集に携わった委員会のメンバーが紹介されてステージに並んだ。その中でも特に、この人の尽力なしには日本語版の完成は成し得なかったと紹介された伊藤顯榮(いとう・あきえい)牧師(日本アッセンブリーズ・オブ・ゴッド教団)が代表して、「引退をしてそろそろ終活かと思っていたときに、この大きな働きが入ってきた。多くの人の祈りと、メンバーの協力を得て、5年の予定だったが実際は8年かかって完成を見た」と、これまでの8年を振り返ってあいさつした。
作業に当たっては、クリスチャンでない若い人にも分かりやすい翻訳を心掛けたといい、なるべくキリスト教用語を使わないようにし、堅苦しい言葉遣いを避けた。また、新改訳聖書と国語辞典の用語に見られる違いを、どのように調和させるのかという点に非常に苦労したこと、日本語の新改訳聖書に準じた内容にするために、あいまいな部分は徹底的に調べ上げたことなどを明かし、「世界42カ国で使用されているファイヤーバイブルだが、今までの中でも最も良いファイヤーバイブルになっていると自負している」と話し、会場全体からねぎらいの温かい拍手を受けた。
伊藤牧師は、会場の牧師らに向けて、「信徒には見せられない、という考えを持たずに、信徒にも未信者にも読んでもらって、みんなで聖書を学んでもらいたい。その上で、さらに牧師は優れた説教をし、日本のリバイバルのために活躍をしてもらいたい」と熱い思いを伝え、日本語版ファイヤーバイブルを託した。
参加者一人一人に直接手渡ししたい、というライフ パブリッシャーズのスタッフの意向を受けて、会の後半は参加者全員への贈呈式に時間が割かれた。テーブルごとに順番に名前を呼ばれた牧師らは、フラッテリー氏や日本語版翻訳・編集委員会のドナルド・スミス氏、米国宣教師団体委員長のホアン・カルロス・ゴンザレス氏らから日本語版ファイヤーバイブルを受け取り、にこやかに握手を交わした。
実物を手にした牧師の1人は約1・6キロのずっしりとした重さをかみしめながら、「まだ中身を読んでいないが、ぱらぱらとめくってみるだけでわくわくする。次週の礼拝メッセージの用意はできているが、早速帰って読んでみて、メッセージの内容を書き換えようかな」と、笑顔で期待を話した。
ライフ パブリッシャーズから発行される注解付聖書『FIREBIBLE(ファイヤーバイブル)』は定価1万1千円(税抜)で、全国のキリスト教書店で取り扱われる。詳細・問い合わせは、日本販売元の伝道文書販売センター(埼玉県比企郡、電話:049・296・3143、メール:[email protected]、ホームページ)まで。