宮城三陸3・11東日本大震災追悼記念会「愛と希望のコンサート」が11日、気仙沼第一聖書バプテスト教会(宮城県気仙沼市)で開催され、約130人が会堂を満たした。外に立てられた「追悼記念会」の看板を見て、「仏教徒ですが、入っても大丈夫ですか」と、初めて教会へ足を運ぶ地元の人の姿も見られた。
宮城三陸の海岸沿いの多くは、6年たった今も津波の爪痕が生々しく残っていた。民家のコンクリの土台が、至るところに点在する。津波を防ぐための防波堤工事。海岸沿いを走る復興道路の建設。ダンプカーが走り、かさ上げされた小高い人工の山がいくつもそびえる。志津川の津波被害のシンボルでもある「防災対策庁舎」は、周囲のかさ上げ工事の影響で、残された鉄筋構造が小さく見えるほどだ。すぐ目の前の海は、道路からほとんど見えなくなった。地元の人は「かつての風景はもうない」と語る。それでも、そこに住む人たちの生活がある。
追悼記念会では、まず同教会の牧師である嶺岸浩氏があいさつに立った。
「私たちは1人ではありません。人は関わりなしに生きられません。1人では生きられないのです。音楽は言葉以上に訴える時があります。音楽を通して、ぜひ1人ではないことを知ってほしいと思います」
今回招かれたのは3組。それぞれの演奏の美しい音色と心温まる歌声に皆が聞き入っていた。
フルート&ギターデュオとして活躍するJ-Symphonie(ジェー・サンフォニー)の北方奈津子さんと長佑樹さん。Jesusと一緒に響き合う(Symphonie)音楽を通じて神様の愛を届けたいと、2015年から宮城県の仮設住宅などでコンサートを重ねている。
キャサリン・ポーターさんは、英国出身の世界福音伝道会(WEC)宣教師でハープ奏者。8歳からハープを始め、本国の英国ではラジオ、テレビなどに出演したこともある。2011年3月に来日し、盛岡バプテスト教会、3・11いわて教会ネットワークの協力宣教師も務める。
ゴスペルフォークシンガーの神山みささんはコンサート前にこう語った。「私は音楽を通じて慰めと励ましを伝えたいと思っていますが、言葉にする時にどうすればよいのか悩みました。神様によって平安を得て、希望を知ることができるようにと願います。そして、まだ神様を知らない人の心に優しく届けることができれば。被災地を思い、励ますような歌は、今までなかなか作れなかったのですが、今日は今年1月にやっと生まれた歌、『新しい日ははじまる』を歌うことにしました」
地震発生時刻の午後2時46分を迎え、サイレンが鳴り響くと、一同は起立。嶺岸氏が講壇のカーテンを開けると、まぶしいほどの光が教会内に注ぎ込んできた。ある小学生は当時を思い出したのか、声を出して泣いていた。厳粛な空気が会堂を包む。
その後、中国出身の三浦シュクンさんが震災を通してキリストの救いにあずかった話をした。
気仙沼の漁師と結婚して来日したシュクンさんは、地震発生時、仕事場にいたが、夫が心配で、すぐに海岸沿いの自宅に戻った。するとその直後、迫り来る津波に三方を囲まれ、数人と共に1本のけやきの木に登って、凍てつく一夜を過ごしたという。震災後、同じ中国出身である李芳牧師(気仙沼ホープセンター代表のディビッド風間牧師の妻)と知り合い、キリストを受け入れる決心をした。
今回のサプライズは、海外からのビデオレターの上映だった。国内外の支援に関わったメンバーから励ましのメッセージが届いたのだ。最後に復興支援ソング「花は咲く」を一同で歌い、心を熱くしながら会は閉じられた。
この地は悲しみの地だ。それでも懸命に生きる人々に対してクリスチャンは何ができるのだろうか。「3.11の記憶が残るかぎり、復興に終わりはない」「心の傷がまだまだ癒えない」と多くの牧師が語った。それでも、自分の故郷を離れて被災者の方々に仕える人たちが、今もここにいる。そして、痛切にあの日を思い出すこの時にも、神様は共にいる。
■ 宮城三陸3・11東日本大震災追悼記念会:(1)(2)