お茶の水クリスチャン・センター(東京都千代田区)で11日、「福島で生きていく―ふくしまHOPEプロジェクトの“これまで”と“これから”」と題した集会が開かれた。東日本大震災に見舞われた福島の子どもたちと共に歩んできた「ふくしまHOPEプロジェクト」が、これまでの活動を報告し、共に祈り合う時を持った。
「ふくしまHOPEプロジェクト」(正式名称「福島県キリスト教子ども保養プロジェクト」)は、福島第1原発事故による放射能汚染によって健康被害の危険にさらされている子どもやその家族の健康を守り、ケアし、希望を持ってもらうための活動を行っている。
まず、事務局長を務める朝岡勝氏(日本同盟基督教団)より、同プロジェクトが2012年4月にスタートしてから5年間で延べ36回の保養キャンプが行われ、その中で411組の家族796人が野外でのびのび遊び、リフレッシュする時間を過ごせたことが報告された。また、キャンプの他にも長期保養としてのホームステイや、土曜午後に県内の教会で持たれる「親と子のホットタイム」などを開催してきたという。
続く報告会では、実際のキャンプで元気に遊ぶ子どもたちの姿がスクリーンで紹介された。また、キャンプに参加した親子からは、「思いっきり外で遊べて楽しかった」「キャンプで休養することができた。これからも心と体と魂を元気にして過ごしていきたい」と、子どもだけでなく保護者も心身のリフレッシュができたことが伝えられた。
それを受けて、現地でキャンプを支えてきたスタッフの代表者3人が次のように話した。「キャンプは1つの大きな家族。子どもの成長を見守り、バイブルタイムを通して御言葉の種まきができて、心から感謝している。原発事故によっていろいろなことを我慢してきた子どもたちにとって、キャンプは子どもが子どもでいられる場所。私たちがその日の計画で頭がいっぱいになっている時に子どもたちの姿を見て、本当に大切なことは何かを教えられた」
この日は、同プロジェクト代表で、ミッション東北郡山キリスト福音教会牧師の木田恵嗣氏がレビ記6章8~13節(新改訳)から「祭壇の火は燃え続けさせよ」というテーマで講演した。
聖書の中で「火」は神の聖い臨在を象徴しており、いつも神が共にいてくださることを表すと同時に、礼拝を表している。さらに、罪のささげ物や、交わりのための和解のいけにえを焼いて灰にする「火」は、日ごとの罪の赦(ゆる)しや神の助けが必要であり、神の前に絶えず出なければならないことを教えている。
祭司には、毎日、祭壇の火を整える役割が与えられていた。木田氏は、「僕(しもべ)として仕えるこの祭司の姿に私たちは教えられるのではないか」と述べ、キャンプで子どもたちに仕えてきたスタッフの姿にそれを重ね合わせた。
また木田氏は、「私たちの力をはるかに超えた災害の中で、神様は福島のために臨在の火をもって現れてくださったと信じている」と話す。それは、日本が壊滅的な被害を受ける可能性があったにもかかわらず一部の被害で守られたこと、震災後、福島県内でキリスト教会の垣根を超えた協働が行われたこと、そして、聖なる神の前に罪深い構造が白日のもとにさらされたことだという。
「原発のことを考えると、人間の罪の性質が如実に表れる。私たちの罪が赦されるためには、イエス様の十字架が必要。その十字架の前で骨を砕く音、イエス様の口から漏れるうめき声に直面しない限り、その罪の現実を知ることはできない。だからこそ、イエス様の十字架を信じる私たちが、この福島の地に集められて共に働くことができ、ここになお神が共にいてくださるということを証しできて、深く感謝している」
最後に木田氏はこう語って話を締めくくった。「今までは外部の人たちの助けで継続してきたキャンプを、今度は地域の教会が協力して、教会の業として福島の地に浸透させていくことができたら素晴らしい。そんな夢を持ちながら、『祭壇の火を燃え続けさせよ』という聖書の言葉を心に響かせている」
報告会に参加した40代の女性は、「以前にボランティアで訪れたことがあり、今の状況について知りたいと思い、参加した。今は現地に行く機会がなかなかないが、今後も福島のことを祈っていかなければいけないと強く思った」と感想を語った。