パキスタンで19年ぶりとなる国勢調査が行われることを受け、同国のキリスト教徒を支援する「英国パキスタン・キリスト教協会」(BPCA)は、少数派のキリスト教徒にとって今回の国勢調査が非常に重要だと話している。過去の国勢調査では、キリスト教徒が不当にイスラム教徒として登録されることもあったという。また、迫害を恐れて自身の宗教を報告することをためらう人も多いとし、パキスタン政府にキリスト教徒の安全を守るよう求めている。
BPCAのウィルソン・チョードリー議長は声明(英語)で、「現地の人々の話によると、以前の国勢調査では、読み書きのできないキリスト教徒たちが、(国勢調査の)提出を助けるべき職員たちによって、誤ってイスラム教徒として登録されることが横行していました。特に、名前から明らかにキリスト教徒だと分からない場合に、そういうことが行われていたと言われています」と述べた。
またチョードリー氏によると、国勢調査でキリスト教徒として登録することで、迫害の標的になるのではないかと恐れる人々もいる。その一方で、国勢調査の職員たちが来なかったとか、調査について何も知らないと話すキリスト教徒も、前回の国勢調査ではいたという。
しかしBPCAは、今回の国勢調査の結果次第では、政府内にキリスト教徒の声を代弁する議員を増やすことができ、信仰のために苦しむキリスト教徒たちを助けることができると考えている。
「私たちは、できるだけ多くのキリスト教徒が、国勢調査で確実にキリスト教徒として登録されるために、キリスト教諸団体に働き掛けを呼び掛けています。正確なキリスト教人口を示すことで、政府内にキリスト教徒の声を届ける議員たちが増え、(少数派の)受け入れ枠制度でもっと有利になります」
キリスト教の迫害監視団体「米国オープン・ドアーズ」は、迫害がひどい国をまとめた「ワールド・ウォッチ・リスト」(英語)で、パキスタンを世界で4番目に迫害が激しい国に位置付けている。
同国のキリスト教徒は、イスラム教に対する冒とく行為を取り締まる「冒とく法」によって頻繁に標的にされ、暴徒の襲撃の犠牲者となることもある。少女たちは、誘拐されたり、イスラム教徒との結婚を強いられたりし、時には殺されることもある。
最近では、12歳のキリスト教徒の少女が殺害される事件があった。警察は当初、自殺だとしていたが、その後、少女が薬物を飲まされ、強姦(ごうかん)された上で殺害されたことを示す証拠が見つかり、世界的に抗議の声が広がったことで、警察は当初の見解を撤回せざるを得なくなった。
こうした状況から、パキスタン議会は2月、キリスト教徒ら宗教的少数派の保護を目的とする刑法の修正案を可決した。しかし、チョードリー氏は「単なるリップサービス」だとし、新法の実効性を疑問視している(関連記事:キリスト教徒など少数派保護目指す刑法修正案、パキスタンで成立の見通し)。
パキスタンの正確なキリスト教人口を把握することは難しいとしつつも、チョードリー氏は、実際の数は政府の統計が示す数よりも「かなり多い」と考えている。
「教会やキリスト教徒たちが政府と協力しないよう、タリバンが働き掛けていますが、私たちは、キリスト教徒や人権団体、教会、牧師があらゆる努力をして、国勢調査で全てのキリスト教徒たちをキリスト教徒として登録させるように呼び掛けます。また、この問題に関しての政府の誤りについて責任を問うために、キリスト教徒自らが(国勢調査で)自身の信仰を明記するよう呼び掛けます」
「私たちはまた、キリスト教徒と他の宗教的少数派が国勢調査で自身の信仰を正直に登録するとき、攻撃され、脅迫されることがないよう、パキスタン政府にはあらゆる努力をするよう求めるとともに、政府がそうすることを期待しています。パキスタンは国内の全ての人々のための、特に傷つきやすい少数派のための政府を必要としているのです」