パキスタンの16歳のキリスト教徒の少年が、フェイスブック(FB)上のイスラム教への侮辱と見なされている投稿に対して「いいね!」をしたために、最大で禁錮10年の判決を受ける危機にある。また、少年の家族も攻撃される危険にさらされている。
少年は、カーバ神殿(メッカにあるイスラム教の最も神聖とされている黒い立方体状の神殿)の神聖を汚すような罰当たりな画像に「いいね!」をしてしまったため、冒とく罪で告発された。少年の行動は、イスラム教徒の友人たちを不快にさせたとされている。友人たちは、少年が自分たちの宗教的感情をひどく傷つけることによって自分たちに大いに不当なことを行ったと申し立てた。
欧州法律正義センター(ECLJ)のパキスタン支部である司法扶助協会(OLA)によると、少年の家族は警察から自宅を去るように勧められ、さもなければ過激派の暴力的報復を受ける可能性があると警告されたという。冒とく罪で告発された過去の事例では、実際に被告の家族が過激派に襲われることがあったという。
米国法律正義センター(ACLJ)の首席訴訟弁護士として働き、OLAも監督しているシャハーヤー・ギル氏はクリスチャンポストの取材に応じ、少年は現在も留置所に入れられており、起訴される可能性が高いと伝えた。
少年は、パキスタン刑法295条と295-A条への違反で告発されている。刑法295-Aは、「あらゆる階級の人々の宗教的感情を不快にさせることを意図した悪意ある行為」を罰することを定めている。
「有罪となれば、少年は最大で10年の禁錮刑を受ける可能性があります」とギル氏。少年の家族は逮捕の知らせを聞いてショックを受けているというが、「恐らく私たちがここ米国で考える意味で衝撃を受けたのではありません。すなわち、米国では、誰かがフェイスブックの投稿に対して、単に『いいね!』をしただけで、その人が投獄されるなんてあり得ません」と述べた。
ギル氏は、「パキスタンの法律の下では、冒とくの観念は非常に広いのです。イスラム教の侮辱と受け取られたことは何でも冒とくになり得ます。申し立てられた冒とくが、実際に冒とくを意図していたかどうかは関係ないのです。会話の最中でのイスラム教に対する正直な批判さえ、冒とく罪での告発につながりかねません」と付け加えた。
「聴き手(今回の場合はフェイスブックの読者)側が、そのスピーチはイスラム教、あるいはその預言者(たち)を侮辱していると思うなら、大抵の場合、違反者と見なされている人に有罪宣告を下すのに十分なのです。換言すれば、イスラム教をからかい、批判するどんなスピーチも、現行法の下では冒とくとされるのです」
ギル氏は、パキスタンの冒とく法により、16歳の若さで留置所に入れられている他のキリスト教徒を知らないと述べた。OLAは少年の家族が法的支援を求めるなら援助するとしている。
パキスタンで少数派であるキリスト教徒は、頻繁に冒とく法を持ち出されて、標的にされている。国際キリスト教コンサーン(ICC)などの監視団体は、冒とく法がしばしば、キリスト教徒に対する個人的な恨みを晴らすために使われていると指摘している。
このような事例の1つが、イスラム教徒の女性たちによって冒とく罪で告発され、2010年に死刑判決を受けたキリスト教徒の女性、アーシア・ビビさんである。
ビビさんの死刑確定は7月、延期されたが、10月第2週には、パキスタン最高裁での最終審理が予定されており、これがビビさんの死刑執行を回避できる最後の法的手段となっている。
ACLJは、ビビさんに対する死刑判決の破棄を求めて抗議するよう、世界中のキリスト教徒に呼び掛けており、3日までに45万5千人を超える人々がビビさんのための嘆願書に署名している。