米ペンシルベニア州の高校の敷地内にある「十戒」が刻まれた記念碑をめぐる訴訟で、高校を管轄する学区側が、記念碑を撤去し、訴えを起こしていた無神論団体側に約4万ドル(約460万円)を支払うことで合意した。
全米最大の無神論団体である「宗教からの自由財団」(FFRF)は2月21日、同州のニューケンジントン・アーノルド学区と和解に至ったことを発表した。発表(英語)によると、同学区はバレー高校(同州ニューケンジントン)の敷地内にある十戒が刻まれた記念碑を撤去し、FFRF側の訴訟費用約4万ドルを支払うことで合意した。訴訟では、記念碑が宗教分離を定めた米国憲法に接触するかが争われていた。
地元紙「トリビューン・レビュー」(英語)によると、同学区のジョン・パロン教育長は「近道を行くため、私たちは妥協して記念碑を撤去することに同意しました」と述べた。記念碑は、2月15日から30日以内に撤去されるという。
記念碑を撤去するとの合意の下で、同学区の保険会社は16万3500ドル(約1860万円)の訴訟費用を支払う。その中には、FFRFに支払われる約4万ドルの訴訟費用も含まれる。
十戒が刻まれた記念碑は、高さ約180センチのもので、1957年にイーグルス共済会によって寄贈され、バレー高校の体育館入り口付近に立てられていた。
FFRF、またバレー高校に通う女子生徒と母親は2012年9月、記念碑を問題視した地域住民らを代表し、同学区を提訴。地元地裁のテレンス・F・マクベリー判事は15年7月、十戒の提示による損害をFFRF側が立証できていないとし、学区側に有利な判決を下していた。
マクベリー判事は判決文で、「原告らは、バレー高校の校庭にある十戒の記念碑により、直接的かつ定期的に迷惑行為に接したという陳述を証明できなかった」などとし、FFRF側の訴えを退けていた。
その後、FFRF側は15年12月に控訴。16年8月、FFRFと共に控訴していたマリー・シャウプさんには訴訟を起こす権利があるとする判決が下された。無神論者のシャウプさんは、記念碑を理由にバレー高校に通っていた娘を退学させなければならなかったなどと訴えていた。
パティー・シュワルツ判事は判決文で、「シャウプさんのような地域住民は、迷惑行為と疑われる物体や出来事に直接的に接したことを示すことにより、権利を立証できる。それは、頻繁に接していない場合でも、あるいは接することを避けようとしなかった場合でも変わることはない」などと述べていた。
シャウプさんはFFRFの発表の中で、「長年犯されていた過ちについて、私と家族が正しかったことを示す手助けをしてくださった全ての人に感謝しています」とコメント。「今回の和解が教訓となり、特に公立学校の子どもたちにとって、国家と教会の分離が重要であることが記憶に留められることを願っています。この宗教的記念碑の撤去は、平等と中立を促進するためにより一層好ましい環境をもたらすでしょう」と語った。