第45代米大統領を決める一般有権者による投票が日本時間9日に締め切られ、即日開票された。国内に時差がある米国では、数時間かけて開票結果が発表され、その様子は、日本のニュース番組、インターネットを通じても細かく報道された。民主党のヒラリー・クリントン候補の優勢が伝えられていた投票前とは一転、開票速報が更新されるたびに、共和党のドナルド・トランプ候補の猛攻が報じられた。大勢が判明したのは、日本時間9日夕方。各社一斉にトランプ候補の「当選確実」を報じた。
この報道を日本に住む米国人たちはどのように見たのだろうか。在日米国人宣教師のリンダ・カーナーさんに話を聞いた。
不在者投票を数週間前に済ませ、選挙結果の出る9日は、早朝4時には目を覚ましてしまったと言うカーナーさん。いつものようにディボーションを行い、「今日も神様の御心がこの地になされますように。選挙の結果がいかなるものであろうとも、主が私たちの王であることには変わりません。どうか今日も1日、私たちをお守りください」と祈ったという。
カーナーさんが勤めるキリスト教関連の職場は米国人も多く、選挙の結果をインターネットを通して、皆が固唾(かたず)をのんで見守ったという。皆それぞれの思いはあったものの、カーナーさん自身は結果に対して満足していると話す。
「トランプ候補の公約についてはおおむね賛成です。彼の振る舞いや暴言については、『大統領として、もっと紳士であるべきだ』と言う人がいます。もちろん、その意見はよく分かります。しかし、その選挙におけるパフォーマンスよりももっと大事な部分があると個人的には思います。第一に、私が彼に賛成し、クリントン候補に反対するのは、人工中絶の問題についてです。彼女は人工中絶を容認する発言をしています。それに対しトランプ候補は、人工中絶に関して一部の場合を除いて、絶対反対の姿勢を示しています」と、カーナーさんはインタビューの冒頭に話した。
人工中絶の可否をめぐっては、「神様に与えられた命」を人工的になかったことにすることは容認できないというのだ。
次に、移民についてトランプ候補の衝撃的な発言をこう説明した。「トランプ候補は、メキシコと米国の国境に壁を造ると話しました。今回の選挙戦において、多くの人が混乱しているのは、『違法移民』と『移民』の違いだと思います。米国だけでなく、もちろん日本にも移民として国に入るのには、多くの過程を経て、『合法的』に国境を越えることはあるでしょう。これを規制すると言っているのではなく、『違法』に国に入ってくる人を規制するとトランプ候補は言っているのです。違法は違法ですから、取り締まりをしなくてはいけません。日本でもそうでしょう?」
「政治経験がないトランプ候補に不安はないか?」と尋ねると、「不安よりも期待の方が大きいです。政治家出身ではないことで、彼にはしがらみがありません。ある意味、新鮮です。民主党のオバマ政権下で多くの人が失望し、貧困にあえぐ結果を招きました。今度は、共和党候補に期待したいという支持者たちの意見は理解できます」と答えた。
「クリスチャンとして、今回の選挙戦をどう見たか?」という質問には、「クリントン候補は今春、『人工中絶に反対する宗教的信念は変わらなければならない』と発言しました。私は、聖書に書いてあることの解釈が変わって良いとは思えません。何でもオープンにしてしまったら、聖書の教えはどこに行ってしまうのでしょう。トランプ大統領の誕生で、これから米国に何が起こるかは誰も分かりません。しかし、私たちの王がイエス・キリストであることに変わりはありません。これからも全世界が平和になるように祈っていきたいと思います」と話した。
来年早々には、第45代米大統領、ドナルド・トランプ氏の就任式が行われる予定だ。聖書に手を置き、宣誓をするトランプ氏は、何を思うのだろうか。