新宿歌舞伎町での苦い経験を経て、渋谷にオープンした物まねパブ「M」に移り、若いファンもでき、ギャラもきちんと支払っていただけるようになり、再び私を取り巻く環境が明るくなってきたようでした。
そんな時、新たなステージ仲間として、3人の男性ユニットが入ってきたのです。彼らは物まねタレントではなく、俳優を目指し、自ら劇団を結成して活動している男の子たちでした。
彼らがかつて所属していた劇団は、当時一大ブームを巻き起こし、若者たちに絶大な人気を誇った「東京キッドブラザース」(以下、TKB)で、パフォーマンスもTKBを彷彿させるものでした。お店が物まねパブでしたので、「少年隊」の物まねをかなり無理してやっていましたが・・・(笑)。TKBのファンであった私にとって、彼らとの共演はうれしいものでした。
特にリーダーのB君は、TKBの看板スターだった柴田恭兵さんに雰囲気が似ていて、私は次第に彼に引かれ、密かにお付き合いをするようになりました。次回公演のヒロインをやってほしいと言われ、まさに、役者としても、女性としても本当に幸せな時でした。
ところがしばらくして、舞台リハーサルが始まった際、彼には既に本命の彼女Aちゃんがいたことが判明! 彼の劇団活動を甲斐甲斐しくサポートしている姿を目の当たりにしてしまったのです!
Aちゃんは、まだ女子大の1年生で、可憐でピュアな、人を疑うことを知らない少女のような子でした。ですから、私とB君の仲を全く疑うこともなく、むしろ私を姉のように慕ってくれました。
私はAちゃんに、隠して接しているのが段々苦しくなっていき、その罪悪感は日増しに募りました。こんな歪んだ恋愛は、早く終わりにしないと自分がダメになる、B君への思いを断ち切ろう、と必死でした。そんな私の苦しい思いを全く知ろうともしない彼は、他の女の子とも付き合い始め、さらには昔の彼女まで登場し、事態はまさに「恋愛ラビリンス」!!
そんな水面下で起きている愛憎劇を知らないAちゃんは、B君の心を信じて彼に献身的に尽くし、彼もまた、Aちゃんだけには自分の不誠実を知られまいと必死でした。その様子を見、私は彼への思いを、きっぱり断ち切る決意をしました。
その方法は、他に好きな人を見つけることでした。同じく失恋し、傷ついていたパブ「M」のスタッフK君とやがて付き合うようになり、B君への思いは消えていきました。
それから間もなく「M」も、オーナーの都合で閉店。B君の舞台公演は、彼の人間性が影響し、トラブルが続出。出演者、スタッフは次々と離れ、私も公私にわたって振り回され、途中降板していたこともあって、公演は中止となりました。
それから彼と会うこともなくなりました。風のうわさでは、その後なんとか公演を行ったそうですが、劇場も随分小さくなり、私が関わっていたときの人たちは、ほとんど残っていなかったそうです。
そして、Aちゃんもまた、彼の裏の顔を知り、去っていったと聞きました・・・。が、しかし!・・・そのB君、後に私を22年間洗脳し、生命危機一発まで追い込んだあの「墓信仰宗教Ⅹ」で、なんと、それから5年後に再会となるのです!!(その話はまた・・・)
B君と別れ、K君と付き合い始めた私でしたが、彼もまた、別れたはずの元彼女の悩み相談を受けているうち、元の鞘に戻り、やはりこの恋愛でも「乙女心」を散々振り回され、深く傷ついた私でした。
「人」の「愛」によって傷ついた心を、「人」の「愛」によって癒やそうとしても、環境で心が変化する「人」では限界があるのだと思います。真の癒やしにたどり着くためには「イエス様の愛」しかないのだと、今なら分かります。
でも、イエス様を知らない当時の私は、このような方法でしか、苦しみから逃れる方法がありませんでした。ですから結果、私の心の癒やしは、とても刹那に終わりました。
しかし、立て続けに男性の裏切りを経験すると、「もう恋愛はこりごりだ」と思うようになり、あらためて「自分は何のために東京に来たんだ! 芸能界で成功するために来たんじゃなかったのか! その目標に向かって走らなきゃ駄目じゃないか!」と、奮起する気持ちが再び沸き立ってきました。
悪魔は、私の「乙女心」を散々傷つけて夢を諦めさせ、敗北感を味わわせ、故郷に返してやろうと企んだのでしょうが、神様は私に「初心の心」(今思えば、主が示されていた私へのご計画)を、強く思い起こさせてくださったのです!
気持ちが前向きになり、神様のレールに再び乗れたとき・・・ディレクターSさんからある提案を頂いたのです。それは、私が芸能界のメジャーな領域へと進む「大きな一歩」でした!
「すべて、疲れた人、重荷を負っている人は、わたしのところに来なさい。わたしがあなたがたを休ませてあげます。わたしは心優しく、へりくだっているから、あなたがたもわたしのくびきを負って、わたしから学びなさい。そうすればたましいに安らぎが来ます。わたしのくびきは負いやすく、わたしの荷は軽いからです」(マタイ11:28~30)
(つづく)
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