先日、刑務所で教誨師(きょうかいし)のご奉仕をしていましたら、受刑者の方が以前ある人からカール・ヒルティ(1833~1909)の本を「座右の書」として読んでみてくださいと勧められたことがあるというお話しをされていました。それでカール・ヒルティは私の最も好きな人の1人です、と申し上げました。
確か大学の時に先生からその名前を聞いたのが最初であったと思うのですが、いつ頃からかヒルティの言葉に惹かれてきました。特に私が愛読してきたのが『希望と幸福 ヒルティの言葉』という本で現代教養文庫から1961年に出版されているものです。
これはヒルティの名言ばかりを集めたものですが、今は絶版になっているようです。それで再びヒルティの本を取り出し、読み始めました。今までに何度も繰り返し読んだものですが、何度読んでもその新鮮さが失われないことに驚きます。ヒルティの言葉をここに少し引用してみたいと思います。
「喜びが何であるかは、元来、多くの苦しみを耐え忍んできた人のみが知っているのだ」
「多くの人々は、適当な時にしたたか不幸な目にあっていたら、それぞれの素質に応じてもっと立派な人になることができたであろう」
「この世からおさらばをしたいが山々の時に、なおかつこの世で神に栄光をあたえ、神のために生きようとすることは、あらゆる人生の使命のうちで最高のものである」
「不断に更新される健康な力は、大きな目的のために非利己的に活動することから湧いてくる。しかもそういう場合にだけ、誠実な援助が見出されるのだ」
「われわれが一たび愛の国に完全にはいってしまえば、たとえこの世がどんなに不完全であっても、それにもかかわらずこの世は美しくゆたかになる。なぜなら、この世はただただ愛への機会から成り立っているからだ」
「人間にあまりに過大な期待を持ってはいけない」
などなど、名言の宝庫のようです。若い人々にもぜひヒルティをお薦めしたいです。
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