米国のペンシルベニア州やオハイオ州、カナダなどで自分たちだけの共同体をつくり、現代文明を使わず、いまだに前近代的な生活を守り通しているアーミッシュの人たちがいます。
一度、オハイオ州にあるアーミッシュの人たちの地方に行ったとき、写真にあるような馬車で人々が移動しているのを車から見かけました。厳しい宗教的規律を守り、大家族制で1つの村は約150人程度の人数に抑えてあるようです。顔と顔を合わせてお互いが十分知り合うことのできる規模の共同体の中で、手厚い互助制度のもとに、自らのアイデンティティーを失わないことを最優先しています。
生活上の必要は全て自分たちで自給自足の生活をし、もちろん、電力会社も役所も老人ホームもありませんし、保険制度も医療制度もありません。教会堂も聖職者制度もなくて、個人の家に集まって聖書を読んだり賛美歌を歌ったりして信仰を守っているようです。教育は8年間だけで、それ以上の高等教育は受けないのが基本のようです。
この共同体の1つの興味深い制度は、子どもたちが16歳になると一時、外の世俗の世界に身を移し、村に帰って来るか外の世界で一生住むかを選択できる期間があることです。成人になるときに、自分で決断して、村に帰って来るなら一生涯村で生活することになるわけです。そのような時期を設けているというところが、このような共同体が現代においても存続し続けている重要な鍵ではないかと思います。
現代文明の利便性にどっぷりと浸かっている私たちの社会には、多くの自殺者、孤独死、無縁死、幼児虐待、老人虐待、いじめ、無差別殺人、原発事故、環境汚染などなど、社会の病理がますます深刻化しています。高度な現代文明が人を本当に幸福にしているのかどうか、アーミッシュの人々が私たちに突きつけている大きな問いのように感じます。今後、彼らのような生き方がますますクローズアップされてくるのではないかと感じています。
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