熊本地震の被災地にある教会とその働きを支えるために立ち上げられた超教派の「九州キリスト災害支援センター」(九キ災)は引き続き、福岡市内の日本イエス・キリスト教団油山シャロームチャペル(横田法路牧師=九キ災代表)に本部を設置し、熊本事務所でボランティアの受け入れなどを行っている。
地震の発生から約1カ月半が過ぎた5月30日、九キ災の運営委員会が、6月から新しいボランティアセンターとなる植木キリスト教会(熊本市北区)で開かれ、活動報告、情報の共有、祈祷課題の分かち合いが行われた。また同日には、震度7の揺れに2度見舞われた熊本県益城町の木山キリスト教会で熊本地震支援会議が開かれ、全国から集まった100人以上が参加した。
運営委員会には、大分、熊本、宮崎、福岡と、九州にある教会の牧師をはじめ、山梨や東京の教会牧師、キリスト教NGO団体のスタッフらが参加。関東大震災の時に生み出された賛美歌「遠き国や」が歌われ、ガラテヤの信徒への手紙から「互いに重荷を担いなさい。そのようにしてこそ、キリストの律法を全うすることになるのです」と聖書の御言葉が拝読された。
司会の横田牧師は、これまで数多くのボランティアや牧師らが被災地を訪れ、日本だけでなく世界各地から熊本を覚えて支援が寄せられたことに対して感謝を示し、「被災地にいる人々にだけ、この重荷を負わせてはいけない。このようなことがなぜ起きたのかと問うことが多いが、それよりも、どう応えていくかが私たち自身に問われている」と奨励の言葉を述べた。
これまでの支援活動については、横田牧師と、これまでボランティアセンターの役割を担ってきた熊本ハーベストチャーチ(熊本県熊本市)の中村陽志牧師(九キ災熊本支部ディレクター)から報告があった。4月18日に九キ災が立ち上がって以降、現在に至るまで緊急支援が主な活動であるが、5月に入ってからはそれに加えて、特に心的なストレスを抱えている子どもたちのケアに力を注ぎ、ワールド・ビジョン・ジャパンやYMCAと協力して「子どもへのケアの学び」を開催したり、「みんなで遊ぼう」や「野球観戦ツアー」などの企画を他に先駆けて行ったりしたという。
中村牧師によると、震災後1カ月半で延べ1200人余りのボランティアが支援活動に参加し、ゴールデンウイークには最大で200人が集まった。キリスト教災害支援団体「CRASH Japan」を通して、米国、シンガポール、マレーシア、フィリピンなど世界各国からもボランティアがやって来たという。
米国からの2人の旅行者が、旅行の後半をボランティアとして熊本で過ごしてくれたということもあったそうだ。被災地では、現在でも家の片付けができていない人が多くおり、ボランティアはブロック塀の解体などの作業に当たってきた。
最初の頃には困っていることを口にできない人も多かったが、時間の経過とともに、地道な働き掛けを通して、一軒一軒とボランティアを受け入れてくれる人々が増え、地域とのつながりが生まれているという。目印である黄色いビブスを見ると、被災者から感謝の言葉をかけられるようにもなってきている。
これまでは、被害の大きかった熊本市、益城町における支援活動がメーンであったが、被害の小さかった阿蘇市、南阿蘇村の支援が遅れていることが分かり、阿蘇市内のゴスペルホーム・グローリー(渡辺雄一牧師)に拠点が置かれることになった。
また、大分県には教会堂を建て直す必要のある教会が三つあり、九キ災の支援の必要が見えてきている。特に、支援活動の体制が整っていない大分では、まず全教会の被害とニーズについてのアンケート調査を進めているところだという。
熊本地震支援会議は、地震によって多くの痛みや苦しみを受けたと同時に、神からの慰めと励ましもあったことを思い出し、共にもう一度神の御心を覚えてこれからの導きを得ることを目的に開催された。100人以上の参加者は、声をそろえて「遠き国や」「安かれ、我が心よ」を賛美し、被災地の教会の牧師のメッセージ、被災体験と証しに耳を傾けた。
「私の心は喜びます」と題してメッセージを語った日本ナザレン教団熊本教会の中出牧夫牧師は、地震発生の1カ月後に心に響いてきたという詩編13編を開いた。「主よ、いつまでですか」という思いが湧き起こったが、「それは分からない」という答えも知っていたという中出牧師は、「だからこそ、私の拠り所は主ご自身にしかない。ならば主の恵みにより頼む。主を喜ぶ」と力強く語った。
証しのために立った熊本東聖書キリスト教会の豊世武士牧師は、「がれきの中に閉じ込められた娘は、余震で潰されそうになったが、聖書の言葉を繰り返し唱え、自らを励まし助けられた。私たちはこれからも伝道していかなければならないと、教会で話している。同じ会堂ではもうできないので、どういう形かは分からないが、歩み出していく」と決意を語った。
木山キリスト教会の小田眞由美牧師は、「世界中のキリスト教会はイエスにあって一つだということ、私たちの教会の信徒は皆素晴らしいということを教えられている。今回の経験を通して、教会が互いに励まし合う器に変えられることを感謝している」と述べた。
東洋ローアキリスト伝道教会熊本伝道所の代表執事は、九キ災のボランティアが震災直後から数多く来てくれたことで、ろうあ者が非常に安心したと感謝の言葉を述べ、「聞こえる聞こえないに関係なく、同じ信仰者として共に活動していきたい」と話した。
ゴスペルホーム・グローリーの渡辺牧師夫妻は、「阿蘇は観光が大切な資源だが、道路が壊れ、お湯が出ず、観光業が大打撃を受けている。農業も盛んだが、畑には深くて長い亀裂が走っている」と被災状況を報告。「阿蘇の将来はどうなるのか、町中に恐れがある。『恐れるな、雄々しくあれ、私がついているではないか』という主の御言葉に腹をくくり、主の約束にすがって、雄々しく歩んでいきたい」と話し、「このような時だからこそ、賛美しなさいと主から語られた」と、渡辺さつき牧師は「Because He lives(主は今生きておられる)」を賛美した。
九キ災はこれから、教会ベースの地域支援をサポートしていく。宣教という最終目標を考え、各地域に拠点教会が起こされていくことが期待される。九キ災は、▽地域教会が一致して働けるように、▽各教会の牧師と信徒の一致のために祈ってほしいと呼び掛けている。